LinkIconうつ病の症状が晴れたら うつ病に効くビタミンやミネラル
 

 
うつとビタミン
 

うつに効くビタミンやミネラル

三大栄養素と言われるタンパク質、脂質、糖質が脳で機能するためには、まずそれを分解することから始まります。食べ物は胃腸の酵素によって、タンパク質はアミノ酸に、脂質は脂肪酸に、糖質はブドウ糖に分解され、腸管から血液にのって脳に運ばれていきます。
 

いくら食べ物をたべても、酵素の働きが弱いと分解されず、栄養素が届けられません。ビタミンやミネラルには酵素のもつ分解する働きを手助けする効果があるため、ビタミンやミネラルを十分にとることは、脳にとっても大切で、うつ病の回復には重要なものです。また、ストレスが多い環境、喫煙や飲酒と言った生活習慣で容易に不足しやすい栄養素であるため、十分に摂取することが必要です。ここでは、うつ病に効くビタミンやミネラルを見て行きましょう。

うつに効くビタミン( ナイアシンアミド等 )

 
 

 ビタミンB群

 
ナイアシン(アイアシンアミド)等の、うつに効果的なビタミンは、ビタミンB群に多くあり、ビタミンB群は、神経伝達物質の合成にも関わりが深く、脳にとって、特に大切なビタミンです。セロトニンもノルアドレナリンもギャバも、その生成過程ではビタミンB6が必要になります。いくら十分に良質のタンパク質をとっていても、B6がなければ、セロトニン等は作られず、うつ病の症状は改善しません。
 
神経伝達物質の合成という働きの他にも、B群は糖質に含まれるブドウ糖の代謝にも使われるので、糖質を取りすぎている人は特に不足しやすい栄養素と言えます。
 
また、ストレスがかかったときに副腎から出るコルチゾールも、ビタミンB6がないと働かず、ストレスが多いほど、B6は使われていきます。
 
ビタミンB群はさまざまな酵素の補酵素として互いに作用しており、単独でとるより、複合的にとることが推奨されています。水に溶けやすい性質を持つ水溶性のビタミンなので、過剰に摂取したとしても尿として排泄されるため、特に心配はいりません。

 B1 (チアミン)

不足すると、手足の痺れ、情緒不安、無気力、頭痛、疲労、等の症状が出やすくなる。

 B2 (リボフラミン)

不足すると、神経が変質してしまうので、情緒不安やうつがおきやすくなる。

アメリカでは抗うつ薬にB2を併用したところ治療効果がアップしたと言う報告がある。

 B3 (ナイアシン)

不足すると抑うつ、不安、疲労、不眠等が出やすくなる。

1日1g~3gのナイアシンアミドを3回程度に分けて摂取すると不安障害が改善したとの報告(アブラハム・ホッファー博士)があります。これはB3がベンゾジアゼピンの抗不安薬と同じような働きをもつからと考えられている。B3には抗不安薬と違い、依存性はない。

ナイアシンとナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)は共にB3ですが、ナイアシンアミドのほうは脂溶性が高いので血液脳関門を通過しやすい。

銅の過剰は低ヒスタミン状態を作り出し、統合失調症が発症しやすくなると言われるが、ナイアシンは銅の過剰を抑える働きがあるので、ヒスタミンを上げ、正常な範囲にする効果がある。

 B5 (パントテン酸)

ストレスに拮抗するコルチゾールを作る際にビタミンCと共にこのビタミンB5が必要となる。副腎疲労には効果的と言われている。睡眠の改善にも効果がある。

記憶に重要な働きを持つアセチルコリンの合成にも欠かせない。

 B6 (ピリドキシン)

神経伝達物質の生成に必須で、不足すると不安や焦燥が出やすい。疲労や不安を発生させる乳酸をたまりにくくする効果もある。

ピロール尿症によってもB6不足になる。

月経前不快気分障害の治療には、日本では未だに女性ホルモンの投与を行う場合があるが効果はほとんどなく、それよりも抗うつ薬やビタミンB6の投与が世界標準の治療である。

日本では少ないが、ヨーロッパではB6や葉酸を抗うつ薬に併用する療法が積極的に行われている。

三環形抗うつ薬に良くある副作用である、口の渇き、便秘、排尿障害などを軽減する作用がある。

パーキンソン病の場合、B6が治療薬の効果を弱めてしまうため、併用は禁止とされている。

ピルを服用するととくにB6の濃度が低下し、セロトニン合成がうまくできずうつ状態になることがあるため、ピルを服用している者は、服用していない人に比べ、50から100倍のB6が必要と言われている。

 B8 (イノシトール)

抗不安薬のリブリウムと良く似た働きをするとの報告がある(プリンストン脳研究所)。それ自体が抑制系の神経伝達物質と考えられている。

 B12 (シアノコバラミン)

不足すると、集中力や記憶力が低下する。さらに不足すると精神病も発症しやすくなる。

生体リズムを整える働きがある。

気分安定のために抗てんかん薬が処方されることがあるが、この薬の副作用としてビタミンB12や葉酸の濃度低下があり、これにより抑うつ状態になることがあるため、抗てんかん薬を服用している場合は、必要であればサプリメントなどから補う必要がある。

葉酸とB12の働きにより合成されるSAM-eはドーパミンやセロトニンの代謝を活性させたり、受容体を活性させるため、抗うつ効果があるとされている。

 葉酸

不足すると心が不安定になったり、気持ちが落ち疲労がでる。

深刻な不足ではエネルギー不足になり無気力で性欲も減退する。

深刻なうつ病で、抗うつ薬の増強療法や電気療法も無効であった患者が、葉酸の摂取で症状が劇的に改善したという例がある。

60%程度であった抗うつ薬への反応率が、葉酸を一緒に摂取させたところ、90%にまで上がったというデータも報告されている(ただし女性のみ)。

日本では数はまだ少ないものの、アメリカでは抗うつ薬と一緒に葉酸も併用する精神科医が増えている。

気分安定の目的で抗てんかん薬が処方される場合があるが、この薬の副作用としてビタミンB12や葉酸の濃度低下があり、これにより抑うつ状態になることがあるため、抗てんかん薬を服用している場合は、必要であればサプリメントなどから補う必要がある。

また、今までにてんかんの既往がある人や、ホルモンに関連したガンの人には、長期にわたり葉酸の大量投与は勧められていない。

葉酸とB12の働きにより合成されるSAM-eはドーパミンやセロトニンの代謝を活性させたり、受容体を活性させるため、抗うつ効果があるとされている。

妊婦にも効果的で、奇形児の出産リスクが低下するとの報告があり、摂取が推奨されている。

 

 ビタミンC

 
風邪などの予防に効果的と言われているビタミンCですが、ストレスや喫煙等により容易に使われてしまう傾向があります。ストレスに拮抗するアドレナリンやコルチゾールを作る際にはB5に加え、ビタミンCも必要になるため、十分に摂取する必要があります。ビタミンCが不足すると副腎が疲れきり、うつ病にもかかりやすくなると言われています。
 
その他、ビタミンCはナイアシンと共に、銅の過剰を抑える効果があります。銅が過剰になると低ヒスタミン状態になりますが、統合失調症は低ヒスタミンあるいは、高ヒスタミン状態で発症、悪化しやすいという報告(ニュージャージ精神研究所カール・ファイファー博士)があります。また、ビタミンCは慢性疲労症候群にも効果的と言われています。

うつ病に効果的なミネラル

 
 

 鉄

鉄が不足するとセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンは作られず、うつ病の症状がでる。

特に女性は鉄分不足になりやすい傾向があり、女性のうつ病の場合、抗うつ薬では治らないのに、鉄分をサプリメントなどで十分に摂取するだけで改善したと言う報告がある。

鉄分には、動物性の食品(豚レバー、鶏レバー、かつお、まぐろなど)に含まれているヘム鉄と、植物性の食品(小松菜、大豆、大根、ひじきなど)に含まれている非ヘム鉄がある。

非ヘム鉄は体に吸収されにくいので、食品からとるのであれば、ヘム鉄を含む動物性の食品を取るほうが良い。

 亜鉛

精子に多く含まれる亜鉛は男性に不足しやすい。

前立腺障害を防ぎ、勢力増進等にも必要な栄養素です。酵素の補因子になっている。

不足すると味覚の障害が出やすく、濃い味を好む。

うつ病の人は時に食べ物の味がわからなくなりますが、亜鉛不足が疑いがある。

爪に白い斑点が出来ていたら亜鉛不足が強く疑われる。

亜鉛不足は、免疫力を低下し、アトピー性皮膚炎等の症状が悪化したり、傷の治りが遅くなったりする。 

亜鉛はインスリンの分泌を調整する働きをもっているため、不足すると調整がうまく出来ず、インスリンが過剰に出すぎたり、逆に出が悪かったりしてしまい、それに伴い血糖の乱高下が見られる。

低血糖症により、気分も不安定となりうつ病のような症状が見られる事がある。

摂食障害の半数が亜鉛不足であったという報告がある。

精神面においては、無感動になったり、無気力になり、まさにうつ病のような症状が出る場合がある。

亜鉛の不足により銅が有害なレベルにまであがり、妄想などを起こすこともある。

亜鉛はストレスや飲酒によって不足しやすい栄養素。

食品の中には牡蠣の他にも鉄分を多く含む食材に多く含まれているので、豚レバー、鶏レバー、かつお、まぐろなどの食品を取れば、鉄と同時に亜鉛も摂取することができる。

 マグネシウム

うつ病にも関係の深いセロトニンなどの神経伝達物質の合成に関っている。

不足すると脳の疲労を招き、不安や不眠、うつ病を引き起こす。

適切に取ることで低血糖症の予防にも効果がある。

 カルシウム

不足すると中枢神経系の正常な働きを妨げ不安やイライラ、うつ病を引き起こす。

高ヒスタミン状態だと統合失調症が発症しやすくなると言われている。

カルシウムの摂取でヒスタミンレベルを下げ、正常値に戻す働きがあります。

 クロム

細胞にブドウ糖を取り込ませて利用させ、血糖の上昇をなだらかにする。

糖質の取りすぎはクロムを排泄しやすくするので注意が必要。

クロムはじゃがいも、ピーマン、小麦胚芽などに多く含まれる。

 マンガン

血糖値のコントロールやエネルギー代謝に関る酵素の補因子となっている。

記憶に関るアセチルコリンの合成にも必要。

統合失調症等の治療薬である抗精神病薬は、マンガンと結合する性質があるため、この薬を服用している人はマンガン不足に陥りやすい。

抗精神病薬の副作用である遅発性ジスキネジアの改善や予防に、効果的との報告がある。

ピーマンや大麦、ライ麦、ほうれん草などに多く含まれている。

 セレン

抗うつ効果がある。

水銀などの有毒物質の排出を助ける作用がある。

甲状腺ホルモンを作る際にもかかせない栄養素。

大根や玄米などに多く含まれている。 

ビタミンやミネラルは食事から摂取することが基本ですが、栄養療法では通常より大量の摂取を行うため、サプリメントの利用も併用して行います。
アミノ酸と違い、ビタミンやミネラルは徐々に体に蓄積していって始めて効果が現れていくようなイメージであるため、効果を実感するには1~3ヶ月以上かかると言われています。
マルチビタミンサプリについては、Mulvita というサイトが参考になります。