うつ病と血糖値
 

うつ病と血糖値

血糖値は糖尿病など体の病気の他にも、自律神経とも関係が深いと言われています。特に低血糖症では神経が高ぶりイライラしたり、不安感が強くなったり、集中できなくなったり、うつ病のような症状も現れます。そのため、さまざまな精神疾患と誤診されてしまうケースも実際にあります。
 

精神科治療で改善しない症状については、栄養の観点からも考えてみるとよいかも知れません。ここではうつ病と血糖値の関係を見てみましょう。

血糖値とうつの関係

 
 

 血糖値とは?

 
血糖とは血液の中に含まれるブドウ糖のことをさし、血糖値とはその濃度の値です。食事等でとられた糖質は、ブドウ糖になり、血液にのって体や脳をめぐります。これが、体を動かしたり、脳を働かせたりする主なエネルギー源となるのです。
 
エネルギー源は生物にとってかかせないものであるため、すぐに使われるもの以外は、肝臓や筋肉、脂肪等で貯蓄もしており、血糖が下がってくると、ブドウ糖に分解し血糖値がある一定の範囲に保たれるように出来ています。
 
この体に蓄える際等に必要なホルモンが、インスリンです。食事等で血液中に血糖が増える(血糖値が上がる)と、膵臓(すいぞう)からインスリンが放出され、それは肝臓等に血糖を蓄えるように働きます。そうすると、血液中の血糖の値が減り、血糖値がそれ以上あがらないように恒常性を保っているのです。
 
糖質の取りすぎ等で、インスリンの分泌が追いつかないなどの異常が現れた状態が糖尿病ですが、検査では異常がない人でも、日常的に糖分をとりすぎ、インスリンが過剰に出ているような場合は、時に低血糖に陥っている人もいます。
 
血糖は、体の他、脳へもめぐっているわけで、この血糖の状態が精神に影響を及ぼすことが指摘されています。
 

うつ病と血糖値の変化

低血糖症の症状

 
 
血糖はエネルギー源ですから、血糖が下がりすぎれば当然、脳にもエネルギーがいかなくなるので、意欲低下や不安など、うつ病に良く似た症状が現れ、うまく頭が働かない状態になります。そうした時のためにも、血糖値が下がりすぎないよう、体には貯蓄しているものがありました。しかし、ブドウ糖を貯蓄する際、肝臓や筋肉ではグリコーゲン、脂肪組織では中性脂肪といった形で貯蓄していますので、それらをもう一度ブドウ糖に変換して血液にのせる必要があります。
 
その際には、甲状腺ホルモンやコルチゾール等の他、興奮系の神経伝達物質であるアドレナリンやノルアドレナリン等が必要になってきます。それらは自律神経へも影響を与え、うつ病のような症状をはじめ、さまざまな精神症状が出るのです。
 
ストレス時には副腎からストレスホルモンが分泌されますが、血糖値を上げる働きをするホルモンも副腎から作られます。ストレスや血糖コントロールのため、副腎が疲労しすぎてしまうと、それは低血糖につながり、特に午前中に抑うつ的になったり、疲労感が強かったり、ストレスを感じやすくなったりする可能性があります。
 
脳に安定してブドウ糖が送り込まれることで、心の平安は保たれます。ブドウ糖の供給が急激にたくさんあっても、少なすぎても、心は乱れやすくなってしまいます。
 
 

 低血糖症の種類

 
一口に低血糖症といってもその種類はさまざまです。食事をしても血糖値が上がらないタイプや、食後に急激に上がりそのあと空腹時よりも下がりすぎてしまうタイプ、血糖値のグラフがきれいな曲線を示さず上がったり下がったり不安定なタイプ等があります。
 
血糖値が上がらなければ、うつ病のようにいつもだるく、朝もなかなか起きられない状態になることが予想されますし、一度上がっても下がりすぎてしまえば、集中力が低下して食後数時間で眠気が強くなってしまう場合も考えられます。また、上がったり下がったり安定しないと、上げ下げするホルモンもその波と同時に出ていることになるので、気分の不安定に繋がっていきます。
 
こうした血糖の変化は通常の血液検査では見落とされがちであるため、栄養を専門にしている医療機関等で専門の検査を受ける必要があります。オーソモレキュラー療法(栄養療法)を行っている医療機関では、通常の血液検査では調べないような項目の検査も行います。
 
 

 低血糖症の症状

 

朝が弱い

エネルギー不足のため、朝起きるのが辛かったり、疲労感が強い。

気分の変化

抑うつ感、不安感、恐怖感、イライラ、焦燥感などが現れる。血糖値が乱高下するたびに気分の波が現れやすくなるため、1日の内でも気分が揺れ動きやすい。

めまい

特に午前や、午後の終わりごろ、血糖値が下がりすぎた時に、めまいやふらつきが起き易い。急に立ち上がるときなどにも起き易い。

睡眠障害

寝つきが悪かったり、何度も芽が覚めたり、寝汗をかいたり、悪夢を見たりする。悪夢はセロトニンが不十分であるときに見やすいと言われている。セロトニンを作る際にはビタミンB6が必要になるが、砂糖の代謝のためにB6が使われてしまい、セロトニンが十分に作れなくなったためと考えられる。

集中力や記憶力の低下

心がざわつき集中力がなく、記憶力も下がりやすい。また、何かを決断するのにも時間がかかる。

食後に眠くなる

食事をすると血糖が上がるので通常は元気になるはずであるが、急激に血糖が上がり、その後に急降下するようなタイプの低血糖症の人は、食事を取ると逆に血糖が下がり眠くなりやすい。

血糖はゆっくり上げることが大切

 
 

 血糖値のコントロール

 
血糖の状態が不安定だと、精神へも影響が現れるという仕組みを見てきました。体のみならず、脳も良い状態で働かせるためには、血糖を急激に上げたり下げたりせず、一定に保つという事が大切であると言えます。
 
特に糖質(炭水化物)は吸収が早いので、急激に血糖値が上がる原因になります。その為、食事の際はまず野菜を食べ、次に肉等のタンパク質や汁物、最後にご飯を少し食べるようにすると、血糖値の急激な上昇を抑えられると言われています。
 
タンパク質もブドウ糖を作りだす働きはあり、血糖を維持する効果があるので、現在の食生活では時に炭水化物の取りすぎに陥っている人も多いと言えます。
炭水化物を取る際は、精製された白米やパンよりも、玄米や全粒粉で作られたものの方が、血糖値の上昇スピードはまだ緩やかです。
 
食品により、血糖値の上がるスピードは違うため、血糖値が早く上がる食品は、あまり取らないようにすると、血糖値が良い状態に保たれ、それが精神の安定にも繋がっていくと考えられます。
 
また、空腹時に食事を取ると、一気に血糖を上げる原因になるため、朝を抜くことはおすすめできません。朝はきちんと食べエネルギーを補給し、昼食時に空腹になりすぎていない状態で食事をすると良いでしょう。その他、スナック菓子やデザートなどをあまり取らないようにすることや、カフェイン、アルコール、タバコを断つのも有効です。
 

血糖値のコントロール

 
 

うつ病の今の診断基準では、現在現れている症状を中心に行われるため、実は低血糖症であったという人も、うつ病と診断されてしまうケースもあります。うつ病と低血糖症の治療法は違うため、誤診であった場合、うつが治らないことに繋がる恐れがあります。
それらのことからも、本来うつ病は、もっと多角的な視点で診断されるべきだと感じます。
治らないうつ病には理由があります。低血糖ということや栄養面での視点も多角的な考え方のひとつです。