自立支援医療
 

自立支援医療 「 うつ病の通院費を軽減 」

うつ病での通院初期は、毎週または2週間に1度程度の通院を継続して行います。また、うつ病は再発しやすい病気であるため、うつ病の症状が消失してからも、一定期間服薬を継続し、再発を防止します。初回のうつ病の場合は、のちに服薬を中止しますが、再発を繰り返している場合は、そのまま服薬を続ける場合もあります。
 

このように、うつ病での治療は長期に渡ることから、お金の負担を減らすため自立支援医療(精神通院)制度があります。自立支援医療の申請をすることにより、うつ病での通院費を、かなり軽減することが可能になりますので、継続的に通院する際は申請をお勧めします。

うつ病の通院費を軽減する制度

 
 

 自立支援医療の概要

 
この制度は、うつ病等の精神疾患で通院する者や、身体に障害のある者の、医療に係る費用を軽減する制度です。精神通院医療は、精神疾患での診察、投薬、精神科デイケア、訪問看護が含まれます。
 
更生医療や育成医療は、肢体不自由(人工関節の手術)、視覚障害(白内障の手術)、内部障害(ペースメーカーの手術、透析)等が含まれます。
 
 

 自立支援医療の対象者

 

精神通院医療

うつ病をはじめとした、精神保健福祉法第5条に規定する精神疾患で継続的に通院する者

更生医療

18歳以上で、身体の障害のため手術等の医療を受ける者

育成医療

18歳未満で、身体の障害のため手術等の医療を受ける者

 

 精神保健福祉法の第5条  

「この法律で精神障害者とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。 」と規定されています。うつ病やてんかん等の精神疾患は、その他の精神疾患に含まれます。

 自立支援医療の申請はどのくらいお得か

 
 

 通常の医療費の自己負担額

 
通常、病院にかかる時は保険証を持参し、定められた負担割合に応じた費用を支払います。いわゆる社保(健保)と言われる会社に勤めている人の保険(被用者保険)では、3割負担(70歳以上で一定所得以外は1割、3歳未満の家族は2割)、自営業や無職等の者が加入する国民健康保険でも、基本的には3割となります。
 
 

 国民健康保険の負担額

 
国民健康保険の負担率は、市町村が決定して良いことになっていますが、国からは以下の通り指針が出ており、通常はどこの市町村でも、以下の通りの負担率となっています。
 

3割負担

小学校入学から69歳まで

2割負担

小学校入学前まで(6歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日以前まで)

70歳以上75歳未満の人のうち、昭和19年4月2日生まれ以降(一定所得以上は3割)

1割負担

70歳以上75歳未満の人のうち、昭和19年4月1日生まれまで(一定所得以上は2割)

 一定以上の所得…

同じ世帯の70歳から74歳の国保加入者の内、住民税の課税所得が145万円以上の人がいて、年収の合計が1人の場合は383万円以上、複数人の場合は520万円以上である場合をいいます。

 
 

 自立支援医療(精神通院の場合)の負担額

 
うつ病で通院した際、国保等のみの利用では3割負担ですが、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、病院窓口で支払う費用が、1割負担となります。さらに、所得に応じた自己負担限度額が設定され、その月に限度額を超えた場合には、それ以上支払わなくてよくなります。
 
自立支援医療は国の制度ですが、東京都には、この自己負担上限額も、独自に全額助成する制度(精神通院医療に係る東京都医療費助成制度)もあります(但し、社会保険加入者、後期高齢者医療保険及び国保で区市町村民税が非課税の世帯の方に限る)。
 
中間所得の場合は、うつ病の症状が「重度かつ継続」という状態であると医師により判断された場合のみ、上限額が設定されますが、うつ病で通院する場合はほとんどが該当しますので、申請した方がお得です。ここで言う「重度」とは、あくまで自立支援医療制度の中でのみ適応される概念と思って下さい。実際のうつ病の程度とは分けて考えて良いです。
 
うつ病は、症状が改善した後も、再発しやすい病気であるため、再発防止のため一定期間、服薬を継続しますが、そのような時には、実際の症状は「重度」ではありませんが、この制度の適用となります。そのため、個人的には「重度かつ継続」という表現自体がおかしいと感じます。「重度または継続」とか「継続医療」とかの方がしっくり来ると思うのですが…。もちろん申請するかしないかは個人の自由ですが、時折、「重度」という表現に捉われて申請しない方がいるので記載しました。
 
ちなみに自分がうつ病で治療している時には、しばらくして通院が月に1度になり、薬も古いタイプのもので、1日1錠程度でかなり安価なものであったため、場合によっては診断書の代金の方が高くつく可能性もあり、申請の手間なども考慮し申請しませんでしたが、基本的には申請したほうが、お得な場合が大半です。
 

所得区分  低所得 中間所得 一定所得
生活保護 低1 低2 中間1 中間2 一定以上
市町村民税 0円 0円
(収入80万円以下)
0円
(収入80万円超え)
33,000円未満 33,000円~
235,000円未満
235,000円以上
自己負担上限額 0円 2,500円 5,000円 5,000円 10,000円 20,000円

 

  •   ここでいう収入とは、障害年金や特別児童扶養手当、特別障害者手当て等を含めた収入の合計額になります。
  •   中間所得及び一定所得の場合は、うつ病の症状が「重度かつ継続」であるとの医師の判断時のみ上限額が設定(一定所得の場合は平成30年3月31日までの特例措置)。
  •   一定所得の場合、うつ病の症状が重度かつ継続に該当しない場合は、自立支援医療制度の対象外となります。

 
 

 自立支援医療で言う世帯の範囲

 
所得を見る上での世帯の範囲ですが、自立支援医療においての世帯とは、住民票上の世帯ではなく、加入している医療保険の世帯で判断されます。国民健康保険の場合は、加入している全員の所得を基に判断されますが、会社の保険(被用者保険)は、被保険者本人のみの所得で判断します。ただし、被保険者が非課税の場合は、自立支援医療を受けようとする本人の収入で判断します。
 
なお、自立支援医療の申請時の保険で判断されますので、前年度に他の家族と同じ保険であっても、申請時に保険が分かれていれば、単独世帯と見なされます。その他、後期高齢者医療保険は独立した保険と見なされ、他の家族とは別の扱いとなります。

自立支援医療の申請の仕方

 
 

 自立支援医療の申請場所

 
自立支援医療の申請は、住民票地の市町村(主に市役所の障害の窓口)です。それぞれの市町村により、窓口の名称は違いますが、概ね障害者支援課や障害福祉課などが一般的です。窓口が不明であれば市役所で「精神障害の窓口はどこか」と聞けば良いです。
 
初回の申請の場合は、診断書を通院先の医師に記入してもらい、その他の必要書類と共に、市役所に提出します。診断書の用紙は病院が所持している場合もありますが、市役所に行って、あらかじめもらってこないといけない場合もあります。書式の様式は、都道府県(政令市)によって違います。
東京都の場合、診断書等の書式は 中部総合精神保健福祉センター(うつ病も対象)のサイト内、下の方の「ダウンロードサービス」から、入手することもできます。
 
自立支援医療申請書自立支援医療申請書
自立支援医療用の申請書は、市役所での申請時に用紙を渡されるので、それに記入します。申請が受理されると、1ヶ月から2ヶ月程度で、都道府県等から自立支援医療受給者証が送られてきますので、通院先の病院受付、薬局等で見せます。病院によっては1度見せれば良い所もありますが、基本的には受診のたびに提示します。
 
 

 自立支援医療受給者証が届くまでの間の通院 

 
本来、自立支援医療は、申請したその日から利用できるものですが、受給者証の発行までに時間がかかることから、申請した際には申請書控えを渡されますので、受給者証が発行されるまでは、申請書控えを受給者証の代わりに、病院窓口で提示すると良いでしょう。病院によっては受給者証でないと対応してくれないところもありますが、基本的には申請書控えがあれば申請が受理された証明になります。

自立支援医療の必要書類は、状況により異なります

 
 
自立支援医療のみを申請する場合、自立支援医療と障害者手帳を同時に申請する場合、すでに所持している障害者手帳を利用して、自立支援医療のみを申請する場合、あるいは、その人が生活保護受給者か、障害年金受給者か、新規での申請か、更新手続きかなど、その方の状況によっても、具体的な必要書類は違ってきます。
 
ただ、基本的には申請書、診断書、世帯の範囲が分かるもの、所得の状況が分かるもの、マイナンバーに関する書類が必要となります。診断書については、3ヶ月以内に作成されたものに限ります。それぞれの場合においての具体的な申請書類は以下の通りです。
 
 

 自立支援医療のみの申請

 
自立支援医療制度は、すべての病院で受けられるわけではなく、指定を取っている病院しか適応されませんが、全国でほとんどの病院が指定を受けているので、大丈夫です。心配な場合は通院先の医療機関に確認して下さい。
 

 必要書類  生活保護のみ  生保+年金  年金のみ  生保や年金無し
保護決定通知書    
年金振込み通知書 ※1    
(非)課税証明書 ※2    
保険証 ※3    
自立支援医療用の申請書
自立支援医療用の診断書 ※4
印鑑 ※5
病院名等のメモ ※6
自立支援医療受給者証 ※7
身分証
マイナンバーに関する書類 ※8

※1 障害年金の受給者で、年金振込通知書をなくしてしまった際は、年金の振り込まれた様子が通帳に記載されていれば、それで代わりになります。
※2 同意書により課税状況の確認が出来る場合には、課税証明書の提出は不要です。 
※3  国保または後期高齢者医療の場合は、同一の加入関係にある方全員分の保険証のコピーが必要です。健保(社保)の場合は、被保険者本人と、受診者のコピーが必要です。
※4  前回の申請時に診断書を提出し、治療方針の変更がなく、期限内の更新の際は、診断書は不要です。基本的に診断書は2年に1度提出が必要です。
※5  代理人が申請書の記入をする場合に必要になります。その他、本人が申請書へ記入する際に、記入ミスがあった場合、訂正印として利用できます。 
※6  申請書には、通院先医療機関や院外薬局の名称、住所、電話番号を記入する欄があるため、それらを書いたメモを持参しておくと良いです。
※7 自立支援医療受給者証は更新手続き時のみ必要ですので、新規での申請の際は不要です。
※8 マイナンバーカードまたは、通知カード+(運転免許証、運転経歴証明書、旅券、各種障害者手帳、在留カード、特別永住者証明書等の内いずれか1つ)


 
 

 自立支援医療と障害者手帳の同時申請

 
上記の注意事項と同様です。写真については3ヶ月以内に撮影した履歴書用の写真等です。
 

 必要書類  生活保護のみ  生保+年金  年金のみ  生保や年金無し
障害者手帳用診断書    
自立支援医療用診断書    
保護決定通知書    
年金振込通知書    
(非)課税証明書    
保険証    
障害者手帳用申請書
自立支援医療用申請書
写真(縦4cm×横3cm)
自立支援医療受給者証
障害者手帳
印鑑
身分証
マイナンバーに関する書類

 
 

 (非)課税証明書について

 
自立支援医療の申請に必要な課税証明書自立支援医療の申請に必要な課税証明書
所得の証明として必要となる課税証明書ですが、当該年度の1月1日に、申請先の市町村に住民票がある場合は、その市役所内で課を超えて調べられるため、自分で課税証明書をとらなくても良い場合があります。その際は、自立支援医療の申請の際に、市町村が税情報を調べても良いか問われ、同意書の記入を求められます。
 
ただ、1月1日に住所があったとしても、同意書での対応をしてくれない市町村もあります。その場合には、やはり課税証明書が必要となります。課税証明書は、支所や市役所の市民税課等にある申請書に記入して提出すると、300円程度で交付されます。その際は、身分証が必要となります。また、申請が本人または同居の親族以外の場合には委任状が必要です。基本的に7月以降(正確には6月下旬頃以降)は今年度の課税証明書が発行できますが、微妙な時期の場合は、市民税課での問い合わせが必要です。
 
 

 更新手続きについて

 
自立支援医療受給者証の有効期限は1年間です。継続して利用するには、期限が切れる前に再度更新手続きが必要となります。更新手続き(再認定申請)は、有効期間が終了する3カ月前から可能です。
 
また、診断書は治療方針に変更がない場合は、2年に1度の提出で良い(更新手続き自体は毎年必要)ことになっていますので、診断書が不要な年は、更新手続き前にあらかじめ主治医に確認が必要です。大きな変更がなければ通常は大丈夫ですので、再診の際などのついでに一応聞いてください。
ただし、2年目の時や、期限が切れた後に新たに申請する際は、治療方針の変更がなくても診断書が必要となります。
 
 

 代理人による申請について

 
うつ病は意欲の低下する病気です。そのため、申請した方が良いとわかってはいても申請出来ない場合があるかと思います。そんな時は代理人が本人に代わって申請することができます。
 
その際は、本人が申請する際の必要書類の他に、委任状と代理人の確認書類が必要となります。
 
代理人の確認書類は、代理人の個人番号カード、または通知カード+(運転免許証、運転経歴証明書、旅券、各種障害者手帳、在留カード、特別永住者証明書等のいずれか1つ)が必要です。個人番号カードや通知カード等が用意できない場合は、代理人の住民票記載事項証明書+(健康保険証、介護保険証、年金手帳、年金証書等の内いずれか1つ)が必要になります。
 

自立支援医療は、通院先の病院等で案内されることがありますが、周知が徹底されておらず、長年通院をしている方の中でも知らない人もいます。
役所から通知が来るようなものではなく、自分で申請しなければいけないため、基本的には受けたほうが良いと思います。