うつ病で生活保護をうける
 

生活保護

うつ病により職を失い、貯金も尽きて日々の生活が遅れない場合等は、生活保護が受給できます。生活保護になれば、医療費も無料となり、公的な経済的給付としては、一番高い給付が受けられます。地域や年齢等にもよりますが、1人暮らしの場合、毎月約13万円前後の受給を受けることができます。
 
但し、 生活保護は、決まった金額以下の家賃の所に住む必要があったり、私的保険を解約しなければならなかったり、できることはすべてした上で、それでも困窮する場合に利用できる制度となります。

生活保護とは 

 
 

 生活保護の概要

 
生活保護は、生活に困っている世帯に対して、健康で文化的な最低限度の生活が送れるように、経済的支援をしてくれる制度です。最低限度の生活とは、一般的な世帯での生活レベルの7~8割程度となります。うつ病をはじめとした病気や怪我により、収入を得ることが出来ない方以外にも、現にお金がなくて困っている方など、お金がなくなった理由は問わず生活に困窮しているすべての方が対象になります。
 
ただし、生活保護は最後の手段と位置づけられているため、まずは障害年金等の公的制度をはじめ、親族等からの支援を受け、それでもなお生活が困窮している場合に初めて対象となります。
 
 

 保護の内容

 
生活保護には以下のような扶助があります。
 

生活扶助

食費、光熱水費、洋服代等。年齢や構成員等により額が異なる。

住宅扶助

家賃、間代、地代等。

教育扶助

義務教育に必要な学用品購入費、給食費等。

介護扶助

介護サービス等。現金でなく介護券による現物支給。

医療扶助

医療機関への受診や入院。現金でなく医療券、調剤券による現物支給。保険適応の範囲内。

生業扶助

小規模の事業を営むための資金、技能習得及び就職支度費等。

出産扶助

出産に関する費用。

葬祭扶助

葬祭に関する費用。

 
 

 最低生活費について

 
最低生活費は、上記の生活扶助や住宅扶助などの扶助の合計額です。これらは、どこに住んでいるか、年齢はいくつか、障害者手帳を所持しているか、入院しているか、1人親かどうか等により、金額が異なります。
 
例えば、1人世帯で、精神障害者保健福祉手帳2級、年齢30歳の場合は、1ヶ月でおおよそ12万~15万円前後の金額が支給されます。住んでいる場所により、金額が異なります。過疎地は金額が低く、栄えている場所は、高くなります。
 
この最低生活費よりも、毎月の収入が少ない場合に、足りない分だけ生活保護から支給されます。最低生活費が15万円の場合、まったく収入がなければ、生保から毎月15万円支給されますが、障害年金が1ヶ月65000円ある場合は、生保からは85000円が支給されます。
 
最低生活費よりも収入が多い時、貯金がある等などは、生活保護を受けることはできません。
 

 
 

 生活保護上の世帯とは

 
生活保護の申請は個人単位ではできません。あくまで世帯ごとに行います。その世帯とは、同じ家に住んでいて、生計を共にしている者を同一世帯と見なします。これは住民票上の世帯とは分けて考えられており、あくまで生計を共にしているかどうかという点が重視されます。
 
そのため、同じ家に住んでいなくても、出稼ぎで一時的に離れている場合や、入院や入所している場合、学校などのために仕送りを受けながら1人暮らしをしている場合などのケースにおいては、同一世帯と見なされます。
 
 
 
 

生活保護を受給するには

 
 

 生保申請から決定までの流れ

 
生活保護を申請する際は、以下の手順で行います。 
 

1.生保申請

申請先は、現在実際に生活している市町村です。これは住民票地より優先されます。

市役所の生活支援課、生活援護課等の生保担当の窓口(福祉事務所)に、必要書類(後述)を持参の上、申請します。

申請の時期は、家賃の引き落としを終えた翌日以降で、貯金が生活扶助の1類+2類の半額(3万~5万程度)以下での申請が理想です。

2.申請受理

申請時に先方から扶養関係図や自分の経歴等を記入する用紙を求められた場合は、それらも記入します。書類に不備がなければ、保険証を返還し、生保が受理されます。

生活保護は調査に日数を要しますが、申請が受理された日にさかのぼって保護が開始されますので、定期的に通院している方などは、病院の受付で生活保護を申請した旨を伝えておきましょう。

扶養義務者には書面にて、扶養届(生保申請をした方に対してどの程度の経済的援助ができるかを確認する書類)が届きますので事前に話しておきましょう。

3.資産調査

本人に対しては、家庭訪問などを通じて高額なものがないか等の調査が行われます。年金や社会保障等の調査も関係機関に入ります。病気等により療養中の者であれば、主治医に対し、就労の可能性はないか等の病状調査が入ります。また、本人と地域の民生委員との面接も実施されます。

扶養義務者については、扶養届により扶養義務者の資産調査を行います。

4.保護の開始

申請から14日以内または30日以内に保護が決定され、自宅に保護決定通知書が届きます。一番初めは申請した窓口(福祉事務所)にお金を受け取りに行きます。一般的には、その後は毎月決まった日に振込みとなります。

一番最初は、最初は日割りで支払われます。

この際に、今後の医療の受け方など、生保を受ける上での注意点等の説明があります。

うつ病等で自立支援医療受給者証を持っている方は、受給者証、保護決定通知書、印鑑を持参の上、障害の窓口で、自立支援医療の所得区分の変更を行います。

5.訪問調査

生保を受けている間は、福祉事務所の判断により1~6ヶ月に1度のペースで、家庭訪問があります。

 

本来受けられるはずの保護が受けられない場合には、知事に対し不服の申し立てを行いことができます。請求期間は、処分のあったことを知った日の翌日から60日以内(やむを得ない理由により期間内に請求できなかった場合を除く)です。また、知事の決裁に不服のある場合には、厚生労働大臣に不服を申し立てることもできます。

 
 

 生保申請に必要な書類

 
生保申請時に必要な書類は以下の通りです。所持していない物は持参する必要はありません。

  
項目 書類名 備考
 賃貸住宅  賃貸借契約書  
賃貸借契約証明書 家賃の支払い後にもらう
年金 年金手帳  
年金証書  
年金振込通知書  
年金定期便(年金特別便)  
医療 健康保険証  
限度額認定証  
特定疾病受領証  
介護保険証  
病院の診察券  
障害 自立支援医療受給者証  
障害者手帳  
障害福祉サービス受給者証  
身分 身分証 免許証、パスポート、ビザ
資格証  
印鑑 シャチハタ不可
扶養親族の連絡先を書いた紙 配偶者、親、兄弟、子
0歳~現在までの学歴、職歴、住所地等を書いた紙  
給料 前3ヶ月分の給料明細  
金銭 手持ち金 入院中にお金を預けている場合は明細書
申請日当日に記帳した通帳 解約していない通帳はすべて必要
保険 生命保険証券  
傷害保険証券  
学資保険証券  
解約返戻金の見込み額を証明するもの  
持ち家 登記簿謄本  
権利証  
固定資産税の決定通知書  
車検証  
自賠責保険証券  
任意保険証券  
駐車場の賃貸借契約書  
査定見積書  
児童 児童手当受給者証 申請や決定に関する書類
児童扶養手当受給者証
子供医療費助成受給券
負債 住宅の強制執行に関する書類 住宅ローンや自動車ローンを含む
借り入れ先や残高がわかるもの

 
 

 扶養義務者とは

 
扶養義務者とは、配偶者、直系血族(親子、祖父母、孫)、兄弟姉妹、3親等内の親族間をさします。資産調査は、本人だけでなく、扶養親族者にも行われます。ただ、扶養届という書面で行います。その書面に、実際どの程度の経済的支援ができるのかを記載して返信します。
 
扶養義務者にも、その方の生活があるため、自身の世帯の生活が送れなくなる程度の支援は求められません。扶養義務者に一般的な貯金があっても、自分の子供のための貯金であったり、老後の貯金であったりするため、それらを使用できない場合等は、書面には「まったく援助できない」と記載して返信します。比較的収入が高い場合等は、「毎月2万円なら援助できる」等を記入して返信します。
 
自分の知っているケースで過去に、扶養義務者に代表取締役の方がいたり、医者の方がいたりしましたが、一般的にはそれらの方が扶養できるのではと感じます。しかし、扶養義務者の内、強い扶養義務を負うのは、夫婦と未成熟の子に対する親だけであり、それ以外の扶養義務者は「自身の立場に相当する生活を送った上で、余力があれは支援する」という程度の範囲に留まっています。
 
生活保護法4条2項でも、「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に、優先して、行われるものとする」と定められており、あくまで優先されるだけで、生保を受けるための絶対条件であるとは定められていません。
 
 
 

生保を受ける際の注意点

 
 

 医療の受け方

 

 医療機関への受診

 
病院等で医療を受けるには、生保指定の病院にかかることになります。指定病院以外は受診できませんので、事前に確認をして下さい。福祉事務所で傷病届を記入すれば、その場で医療券や調剤券を発行してくれるので、それをもって病院を受診します。医療券等は、事前に電話して、支所で受け取ってから受診することもできます。
 
これらは保険証と同じようなものなので、毎月必要になります。病院の窓口では医療券を、薬局では調剤券を渡せば、自己負担はありません。
 
休日や急患で病院を受診する際は、保護決定通知書をもって病院を受診して下さい。その後改めて医療券等を受け取り病院へ届けます。
 
社会保険に加入しながら、生保も同時に受けている方については、病院の窓口で医療券等と共に、保険証も同時に出して下さい。社会保険の3割分が生保から支払われます(自己負担はありません)。
 
 

 施術機関への受診

 
打撲や骨折の応急手当以外の接骨院への通院、またはハリ、灸、あんま、マッサージ等については、医師の診断が必要になるため、生保に相談して下さい。
 
施術機関への受診の際も、生保指定の施術機関以外の受診はできません。施術券が必要となりますので、生保に相談して下さい。
 
 

 通院費について

 
身体障害などの理由により、電車やバス等の公共交通機関が利用できず、タクシーとなる場合や、公共交通機関を利用しても通院費が高額になる場合には、通院にかかる費用や移送にかかる費用を生保が負担してくれる場合があります。その際は、主治医の意見等を聞いて最終的に生保が決定しますので、必要な方は生保に相談して下さい。
 
 

 生活を送る上での義務

 

 出来る範囲での就労

 
生保を受けている間は、まったく働かなくて良いわけではありません。もちろん主治医から就労を止められている場合は、その限りではありませんが、就労可能な状態であれば、生保からも就労勧告を受け、能力に応じた仕事をすることを求められます。
 
働いている方は毎月、給料明細と共に収入申告書の提出をする必要があります。収入申告書については、収入のない方も定期的に提出の必要があります。
 
 

 必要な届出

 
年金や手当ての額が変更した時、臨時の収入があった時、家賃の金額が変わった時、就職や退職、通院や入院、妊娠や出産など、生活に変化のあった時にも届出が必要です。生活保護法の第61条により届出の義務が定められています。家族などによる現金での仕送りや物品も収入認定されます。アパートの更新料は生保から出ます。
 
ただ、障害年金等と違い、心身障害者扶養共済制度による収入は、収入認定されません。また、就労による収入は、一定額を差し引いた額が収入認定されます(一部は手元に残ります)。
 

心身障害者扶養共済制度とは、障害者を扶養している保護者が、毎月一定額の掛け金を納めることにより、保護者が亡くなった後や重度障害になった時から、障害者に終身にわたり一定額のお金を支払う制度で、都道府県または政令指定都市が実施している制度です。掛け金の全額が所得税及び地方税の対象となる所得から控除され、また、受け取ったお金に対しても所得税がかかりません。生保も収入認定できません。

 
 

 認められない事柄

 
持ち家を持っている場合は、必要最低限の家と土地に関しては認められますが、その範囲を超える場合は、売却指導が入ります。また、住宅ローンが残っている場合も所有は認められません。
 
自動車については、自営業、タクシー運転手、身体障害者が通院や通勤に使用する場合、過疎地で公共交通機関が著しく不便な場合を除き、所有は認められません。
 
生命保険等は、世帯の保険料の合計が、最低生活費の1割以下の場合は認められることがありますが、基本的には認められません。
 
また、生活保護を受けている間は、借金をすることはできません。生保申請時に借金がある場合も、基本的に自己破産の手続きを行い、その後に申請となります。
 
収入を正しく申告しなかった場合等は、生活保護の不正受給となり費用の返還を求められたり、厳しく罰せられます。
 

生活保護法第78条「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。」
生活保護法第85条「第八五条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。」