うつ病を見守る
 

うつ病を見守る人へ

うつ病の治療においては、周囲の接し方も重要になります。うつ病は、ある意味、過敏に反応する状態とも言える為、周りの人の何気ない一言が治療の妨げになる場合があります。
 

適切な対応をする為には、まず病気に対しての正しい知識を、本人のみならず、うつ病を見守る人も得る必要があります。その上で、いくつかのポイントに配慮しながら、見守っていく姿勢が大切です。ただ、私は周りの人が過剰に考えすぎて、対応することは逆効果になると思います。基本的には、いつもと変わらない姿勢が大切だと感じます。但し、以前の周りの環境が悪かった場合は、積極的に周りの人も考えないといけません。
 

うつ病の見守り方 「 うつの正しい知識を得る 」

 
 

 気の持ちようでは治らない

 
日本には「病は気から」という言葉がありますが、根性や気の持ちようでは、うつ病は治りません。精神論が好きな国民性ですが、つらい気持ちを理解してもらえないのは本人にとってかなり苦しいものです。
 
また、病院で相談業務を行っていると、「新興宗教等に相談したら、薬をやめてうちに来させたら病気が治ると言われたので、薬をのませていない、お布施を払った…」等の話を良く聞かれますが、良くなるどころか悪化しています。
 
うつ病の人が増えるにつれ、それがビジネスになると考える、悪い団体がたくさんあります。何かのエキスを飲むと治るとか、このテキストを読むと治るとか、たくさんありますが、絶対に手を出さないで下さい。周りの人は本人が「病気である」ということをまず受け入れた上で接するのが大切です。
 
 

 服薬を見守る

 
病気の完治に服薬は最も重要です。しかし病気の影響で注意力が散漫になっていると、時に薬を飲むのを忘れてしまうこともあります。また、人によっては服薬を拒否する方もおられます。周りの人は本人の服薬を注意深く見守って下さい。
 
状況によっては薬のセットをすることさえ自分で出来ない場合もあります。必要であれば本人にかわって薬をセットしたり、服薬時に手渡しをすることも一考です。次回の受診までに飲み忘れ等が何回あったかという情報も、把握しておく必要があります(本人もしくはご家族等から医師に伝えて下さい)。もし服薬を拒否するのならば、本人なりの拒否する理由に十分に耳を傾け、医療機関の職員と連携すると良いと思います。
 
 

 必要があれば受診に同席する

 
うつ病になると、自分の思いを相手に的確に伝えることが、難しくなる場合があります。また、本人が感じている症状と、周りが感じる症状とに差が出る場合もあります。
 
本人に合った薬を処方してもらうには、常日頃の症状を正確に把握し、それを正しく医師に伝える事が必要となりますので、本人が自身の症状をほとんど医師に伝えられていないと思われる場合には、状況を良く知る人が受診に同席するのも方法のひとつです。
 
 

 うつ病の波を理解する

 
薬が減ったり調子が良さそうだと、周りの人もうれしくなって、つい気分が高まってしまいますが、そのような時でも、極力いつもと同じ態度で接するようにして下さい。逆に薬が増えたり、調子が悪い時も、変わらない態度で接するように心がけます。本人が早く治らなければいけないと感じないように、長い目で見守ります。良い時も悪い時もある、という事を受け入れ、一喜一憂しないようにします。
 
 

 プレッシャーを与えない

 
まじめで責任感が強い方は、うつ病になりやすいと言われています。頑張りすぎた結果、発症することが多いからです。本人自身が病気で頑張れない、もどかしさの中にいます。そのため、励ましは時に相手を追い込みプレッシャーを与えることに繋がってしまう場合があります。本人がプレッシャーを感じないような接し方が大切です。
 
 

 一方的な話を避ける

 
相手へ、一方的に話をするような態度は避けましょう。自分が話すより、相手の話を聴くという接し方が大切です。何か話しかける必要は特にありません。相手が話してきたら、それを聴くようにします。話の内容より、その人の感情を大切にする視点が必要です。悲観的な話であったとしても、ありのままにその感情を共感する姿勢が重要です。良い悪いの判断をする必要は特にありません。ただ、「離婚をする」「退職する」等の重要な決断をせまられるような事柄については、ある程度良くなってから考えようと、保留にするよう促して下さい。
 
 

 休養できる環境をつくる

 
家の中がピリピリして口論が耐えなかったりすると、よけいなストレスが高くなり、治るものも治りません。これを機会にまわりの人は、自身の性格を見つめなおして見ましょう。 また、本人に休んでもらおうと、あまりにもせわしなく動き回ると、自分も何かしなければならないと感じてしまい休めません。家の中にゆったりとしたリズムを作りましょう。
 
 

 本人の心配ごとを減らす

 
病気になる前に、いろいろと役割の合った人にとっては、病気によって休んでいる最中も心配でなりません。例えば、お母さんならば、家事もしなければならないし、子供の迎えにもいかなければならないし、おちおち休んでいられないと心配になってしまいます。
 
それらのストレスを少しでも解消するため、「家事はヘルパーさんが来てくれているから大丈夫、子供の迎えは祖母がいってくれているよ。祖母は毎日まごに合えて喜んでいるよ」というように、新しい対処が、誰かの負担になっていないといったように伝えると良いでしょう。もちろん伝えるだけでなく、実際に家族等の負担にならない方が良いです。 
 
 

 本人に安心感を与える

 
うつ病の症状として、時に子供のように甘えてくることもあるかもしれません。または逆にイライラとしているかもしれません。うつ病はさまざなま精神状態になりますが、あまり難しく考えずに、ただ同じ時間を過ごし、近くにいるだけで良いです。ひとつの病気の症状と捉えて下さい。うつ病の回復と共に以前のように戻ります。一般論で考えないようにしましょう。
 
 

 無理に勧めない

 
寝てばかりいるとダメになるといって、無理に運動をさせたり、旅行に連れ出したりする方がいますが、逆効果です。運動は医師の指示のもと、適切に行っていれば効果的ですが、それには適切な時期があり、療養の基本は休養です。また、少し体が動くようになると本人は焦って、自ら活動を起こすようになります。しかしその際は、本人が回復を焦っていないか、周りの人は注意深く見てください。場合によっては本人の活動を静止し、休養を促すように接します。
 
 

 自殺を防止する

 
症状が特にひどい時は横になりっぱなしで、自殺する力も残っていませんが、回復しかけて少しずつ動けるようになった頃に、自殺という行動に出る場合があります。本人から少しでも自殺をほのめかすようなことを聴いた時は、死にたい気持ちがどのレベルにあるか以下の点をポイントに探り、自殺をしないと約束をさせて下さい。
 
 

  1. いつからそういう気持ちがあるのか
  2. 実際に自殺するための方法を考えているのか(飛び降りる、首をつる等)
  3. 自殺するための道具をすでに手に入れているのか
  4. 死なないと約束できるか

 
 
約束ができない場合はかなり危険です。すぐに病院に連れて行って下さい。その他の場合も、目を離さないようにして、主治医に判断を仰いで下さい。
 
 

 周りの人の健康も大切

 
看病に専念しすぎたり、どうにか改善したいと考え込みすぎたりすると、それは過度のストレスとなり、時に自分が病気になってしまいます。
 
その為、ひとりでかかえこまず、相談しましょう。「家族会」等のつらさを共に理解しあえる場に参加することはとても有効です。周りの人は、今までやっていた趣味等は可能な限りそのままにして、うまく気分転換をしましょう。周りの人の精神状態を良い状態で保つことは、本人の回復にも繋がっていきます。逆に精神状態が悪い状態で相手に接すると、相手の状態も悪くなりやすい傾向にあります。