睡眠環境
 

快適な睡眠環境

より良い睡眠を得るのに、生活習慣の改善が重要であることはすでに述べましたが、同時に 睡眠環境を整える事も同じように大切と言えます。寝具をはじめ、寝室の環境を見直してみるだけで、睡眠の質に大きな違いが現れます。
 

うつ病の治療だけでなく、いろいろな病気の予防や治療においても、睡眠の環境について見直してみることは、有意義であると思います。

快適な睡眠環境 「 寝室の環境 」

 
 

 寝室の温度等

 
良い睡眠をとるのに一番快適な環境は、寝室の湿度が50~60%で、室温は26度前後、寝具内の温度は、33度が良いと言われています。特に真夏は熱が放出されず、深部体温が下がらないので、眠れないことが多くなります。
 
ある実験では、室温29度で深部体温が1度下がりましたが、室温35度では深部体温がまったく下がらなかったとの報告があります。冬は寝具で調節できることから、室温3度以上で入眠可能です。
 
いずれにしてもエアコン等を適度に使用し、適切な睡眠環境を作るのが、快眠につながります。その場合はタイマーなどを数時間つけて、明け方には切れているような使い方が良いです。
 
また、温度調節のために、夏場のカーテンは熱を脱がしやすい薄手のものを使用し、冬は保温効果のある厚手のものを選ぶのも効果があります。
 
 

 光の強さ

 
睡眠と明るさの関係
脳は完全に情報を遮断してしまうと、空回りして逆に混乱を招くと考えられており、そのような時には幻覚を見やすいと言われます。そのため寝室は真っ暗にするのではなく、ほのかに暗い環境が快適であるとされています。
 
ちなみに蛍光灯や白色のLEDは、脳を覚醒させる作用があり、電灯色はリラックスさせる効果があります。ホテルなどで電球色が使われるのが多いのもそのためです。ファミレス等でも座席では電球色で、ドリンクコーナーなどは蛍光灯ですね。ドリンクを注ぐ時はこぼさないように注意を与え、座席ではリラックスさせるような環境になっています。
 
ライトでは特に、青色波長(ブルーライト)は、脳に強い覚醒作用を与えます。スマホ、TV、PCなどの画面からはブルーライトは出ているため、寝る前に行うと、眠れなくなる恐れがあります。たとえ寝つきが悪くならなかったとしても、睡眠が途切れがちになり、質の良い睡眠が取りづらくなるので、スマホ、TV、PCなどは、就寝の2時間前には使用しない方が良いです。
 
 

 色彩

 
色彩にはさまざまな効果があります。たとえば、同じ味のコーヒーを飲んでも、まわりの壁が真っ赤なところと、青いところでは、コーヒーの味がかわって感じられます。味覚のみならず、気分にも影響することがわかっており、一例として、赤には覚醒作用が、緑にはリラックス効果が、青には安眠作用があります。 
 
そのため、寝室には青を基調にすると良いでしょう。また、さし色としてや、海や空などの青っぽいポスターなどを、ベットから眺めながら横になるのも効果的です。 
 
その他、原色と言われる強い色は、緊張感を与える色です。パステルカラーのような淡い色の方が、安らぎを与えてくれます。うつ病ではベットの上で過ごす時間が増えますので、そこから見える景色を整えることは、手軽にできる方法だと思います。
 
 

 音響

 
基本的に大きな音響は睡眠を妨げますが、ゆっくりとしたテンポの音や、自然界の音などは、入眠の助けになると言われています。リラックスするCDなどをかけてみるのも良いでしょう。しかし睡眠中にも音が入ってくると、それにより目がさめる可能性があるので、ノンレム睡眠に入る30分以上前に、音楽が止まるよう、タイマーの使用をお勧めします。
 
 

 香り

 
睡眠とアロマ
快眠のためには、活動中に働いている交感神経から、リラックス状態で働く副交感神経へと、シフトしていく必要があります。読書や音楽などはその一例ですが、どちらも逆にそれらに意識が集中してしまい、眠れないという方もいます。
 
そこで効果的なのが、アロマオイルの香りです。刺激の強いミント系は逆に覚醒を促すので避け、不眠にはラベンダー、カモミール、サンダルウッド、ローマン、ネロリなどが効果があるとされています。コーヒーは飲むと逆効果ですが、その香りにはリラックス効果、安眠効果があるといます。その中でも、グアテマラとブルーマウンテンの香りが、特に効果的という報告があります。ちなみにブラジルサントスとマンデリンには、脳を活性化する作用があります。
 
また、うつ病や不安障害には、オレンジ、ベルガモットなどの柑橘系や、イランイランなどの香りが良いとされています。そのまま眠ってしまった場合を考慮して、アロマポットは、ろうそく式ではないタイプを選ぶと良いと思います。ただ、レモンについてはギャバ受容体の作用を弱めると言われているため、集中力を要するときには効果的ですが、睡眠時には使用しない方が良いです。
 
不眠

ラベンダー  カモミール  サンダルウッド  ローマン  ネロリ

うつ、不安

オレンジ  ベルガモット その他の柑橘系  イランイラン

 
 
特定の香りをかぐと眠りやすくなるのは、嗅覚が人間の本能と密接に関る、大脳辺縁系に刺激を与えるためと考えられています。五感のうち、嗅覚以外の感覚は、いったん脳の表面の大脳皮質に行ってから、大脳辺縁系に伝わりますが、嗅覚に関しては、直接大脳辺縁系に刺激を与えるため、人間の本能に最も強く作用すると言われています。
 
脳が穏やかにリラックスしている時に出る脳波として、アルファー波がありますが、数ある香りの中でも、ラベンダーの香りが最もアルファー波を出現されると言われています。ラベンダーの香りには、脳を休ませ、入眠に導く効果があると言えます。

快適な睡眠環境 「 適切な寝具 」

 
 

 寝具の種類

 
寝具については、布団派、ベット派、どちらもいると思いますが、アレルギー等がある方はベットが良いと思います。理由は布団の場合、じかに床に敷くので、床のほこりやアレルゲンとなるその他の物質を、寝ている間に多く吸い込んでしまうことになるからです。
 
その点、ベットは床から少し高さがある分、アレルゲンとなる物質の行き来がその空間内で多く行われ、ベットの上まであまり上がってきません。 また床との間の空間は、通気性が良くなり良湿気がたまりにくくします。部屋の作りや大きさの問題もありますが、可能であれば布団よりベットをお勧めします。
 
 

 通気性の良い寝具

 
人は一晩で約180ccの汗をかくと言われています。寝具は、以外にたくさんの水分を吸収しているのです。そのため、寝具は通気性の優れているものを選び、まめに天日干しをして水分を発散させましょう。
 
 

 腰が沈まないマット

 
人の寝姿勢は、自然に直立した時と同じような、S字を描くものが良いとされています。柔らかすぎると腰が沈んでしまうので快眠には良くありません。逆に硬すぎるものも同様にダメです。
 
 

 アレルギー対応であること

 
ダニは、温度が20~30度、湿度が60~70%と高温多湿の環境を好んで生息します。つまり寝具の中は、かっこうの住処となります。掛け布団を、顔のそばまで引き寄せたり、手でおさえたりした時に、圧縮されてダニの死骸等が出てきて自然に吸引しています。ダニは0.3ミリ前後と、とても小さいので、縫い目から行き来しているのです。 特に喘息やアトピーなどがある方は、しっかりとアレルギー対応の寝具を選ぶ必要があります。

 
 

 自分に合った枕

 
最近、睡眠の専門店ではピロフィッターという資格をもった方がいて、その人が自分に一番合った枕を一緒に選んでくれるところも増えています。後頭部と背骨の一番高いところを線で結び、その線から首が何センチ前に出ているかを計測し、その高さによって自分に合った高さの枕を選んでくれます。
 
自分は今まで高めの枕を使って寝ていたのですが、以外にも、とても低いことがわかりました。ピロフィッターの方に枕を選んでもらってからは、以前より熟睡できるようになりました。枕にも寿命がありますので、(材質により違いはあるが、おおむね数年程度)適時買い替えが必要です。

うつ病の回復に睡眠はかなり重要な位置を占めているのにも関らず、うつ病では質の良い睡眠がとりにくくなります。快眠のためには、生活習慣の改善と共に、睡眠環境も見直してみると良いと思います。