うつ病サプリ
 

うつ病とメンタルサプリ

ビタミン、ミネラル、アミノ酸以外にも自然界には、昔から薬のように使われてきたハーブがあります。日本ではサプリメントとしての扱いですが、ドイツやイギリスなどのハーブ先進国では、うつ病の治療として、ハーブが医薬品の形で処方されているほどです。

 
製薬会社は人工的に作った物質でないと特許がとれないため、天然の物質の研究には消極的ですが、うつ病の症状があるが、精神科に受診するほどではない、あるいはうつ病の再発を予防したい、健康を維持したい等の場合に、抗うつ効果や抗ストレス効果などの作用があるメンタルサプリを試してみることは有効であると感じます。

天然サプリの安全性

 
 
サプリ
ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブはどれも自然界に存在する物質であり、うつ病治療にも効果的といえますが、一般的に人工的に作られた薬と違い、副作用や依存といった問題はかなり低く、安全性が高いと言われています。
 
ただ、まったく副作用がないかと言えばそうではなく、作用がある分、副作用もあると考えるのが通常です。また、天然の物質のすべてが安全かと言うと、決してそうではありません。マリファナやコカインも天然の物質です。
 
最近では脱法ハーブなども社会問題になっていますが、ハーブという名前だから安全というものでもありません。
 
食事でとれる天然物質の量はそれほど多くないため、あまり神経質になる必要はありませんが、メンタル系サプリメントを使用する場合は、一定の注意が必要です。すでに治療中で服薬をしていたり、妊娠していたり、内科的に疾患がある場合などは、医師に相談の上行う必要があります。
 

メンタルサプリ「ハーブ編」

 
 

 バレリアン(セイヨウカコノソウ)

 
バレリアンはベンゾジアゼピンの抗不安薬と同じように、ギャバの働きを強めることで、鎮静効果を現しますが、ベンゾジアゼピンと違い、依存性などの副作用がないと言われています。ドイツにおける薬用植物の評価委員会である「コミッションE」でも、不眠症や不安症への使用が認められているハーブです。抗不安、抗緊張、リラックス効果、睡眠の改善等の効果があり、日本でもメンタルサプリとして販売されています。
 
バレリアンには、ブドウ糖と有機物質の繋がった配糖体、精油、吉草酸、アルカロイドなど多くの成分が含まれていますが、このうち吉草酸には独特の臭いがあるので、サプリも独特の臭いがします。
 
アルコール、抗ヒスタミン剤、筋弛緩剤の働きを増強させる可能性があるため、これらの物質と同時に摂取する場合には注意が必要です。
 
 

 パッションフラワー(トケイソウ)

 
ギャバの働きを強め、脳の興奮を穏やかに抑える効果により、ストレスを軽減し入眠が容易になり、睡眠を深く長くする効果があると言われ、コミッションEでは、睡眠障害の治療薬として認められています。欧米では児童や高齢者などの、睡眠改善に対しての使用が多いです。その他、抗不安、抗緊張等の効果があります。
 
サプリメントで扱うパッションフラワーは、パシフロラ・インカナタという植物の花や葉を乾燥したものが使われており、これらにはフラボノイド、クロロゲン、アルカロイドが含まれています。
 
過去の実験で、不安のある患者36人の内、半分のグループはパッションフラワーの抽出液を1日45ドロップ服用し、もう半分のグループは、ベンゾジアゼピンの抗不安薬であるオキサゼパムを1日30mg服用したところ、1ヶ月後の実験終了時どちらも同程度の抗不安作用がありました。ただし、薬の方は早く効果が現れた一方で、眠気の副作用も同時に現れたのに対し、パッションフラワーの方は、効果が現れるのが遅いものの、副作用はありませんでした(テヘラン大学アコンザデー教授による実験)。
 
大量摂取で弱い幻覚を引き起こすという報告があり、サプリメントなどで摂取する際は、使用量を守ることが大切です。
 
 

 セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)

 
うつ病の治療でも有名なこのハーブの有効成分は、ハイペリシンという物質で、これがセロトニンの再取り込みを妨げることで抗うつ効果を現すと考えられ、一般的な抗うつ薬と、作用の仕方は同じであるため、うつ病のサプリとしては代表的なものです。
 
しかし、抗うつ薬には、吐き気、不安、性欲の減退などの副作用が出る場合があるのに比べ、セントジョーンズワートには、それらの副作用が薬に比べてはるかに少ないため、うつ病の治療として、ドイツの医師の70%が、薬より優先的にこのハーブを処方しているほどです。
 
重症のうつ病には効きにくいですが、軽症から中等度のうつ病に関しては、抗うつ薬と同等の効果があるとされ、コクランデータベースにもエビデンスが紹介されているほどです。
 
 

 セントジューンズワートを飲む前に 

 
すでに抗うつ薬を服薬している方は、薬との相互作用が予想されますので、必ず医師に相談すべきサプリです。SSRI等の抗うつ薬との相互作用で、セロトニン症候群等の重篤な副作用が出る恐れがあります。
 
セントジョーンズワートと飲み合わせが悪い薬は、抗うつ薬以外にも、抗不安薬のアルプラゾラム、偏頭痛薬のトリプタン、免疫抑制剤のシクロスポリン、強心剤のジゴキシン、喘息薬のテオフィリン、抗血栓薬のワルファリンなどがあります。
 
 

 アシュワガンダ

 
インドに自生する、ウイザニアソムニフェラという植物の根を乾燥させたもので、フラボノイドと、ウイザノライドと言う、植物ステロイドが有効成分です。甲状腺機能を高めるため、元気が出て免疫力を上げる作用のほか、ストレス応答を和らげ、ストレスホルモンであるコルチゾールレベルを下げる働きも持ち合わせていると言われています。また、思考力や記憶力を高める効果もあるとされています。
 
ラットを用いた実験では、アシュワガンダによって神経細胞の軸索(情報を送る側)と樹状突起(受け取る側)が伸びる事が確認されています(富山医科薬科大学・松本かつ子助教授)。このことは、うつ病の回復にも大きな関係があるといえます。
 
 

 ロディオラ

 
東シベリアに自生するロディオラロゼアという植物で、ロザビン、サリドロサイド、カテキンといった有効成分が含まれています。うつ病とも関連の深い、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンは、モノアミン酸化酵素(MAO)により分解されますが、ロディオラはこの酵素の働きを阻害するため、ドーパミンなどの伝達物質が長持ちし気分が良くなったり、集中力が上がったり、ストレスへの抵抗力をつける効果があると考えられています。
 
 

 イチョウ葉エキス

 
イチョウ葉に含まれる、テルペノイドとフラボノイドが脳の血液循環を活発にさせるので、思考力を高め、記憶障害、めまいなどに効果があるとされ、ドイツをはじめとするヨーロッパでは医薬品として扱われています。また、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果があることもわかっています。脳の血液循環を活発にさせるという働きは、うつ病にも良い効果を及ぼすと言われています。
 
イチョウ葉は、ドイツでは医薬品でも、日本では単なる健康食品であるため、日本のイチョウ葉サプリを取る際は、商品選びに注意が必要です。
 
イチョウ葉には、ギンコール酸というアレルギーを起しやすい物質が含まれているため、ドイツでイチョウ葉が医薬品になるには、ギンコール酸の数値が5ppm以下と定められています。しかし日本では、単なるサプリなので、基準の定めがなく、ギンコール酸の処理が適切になされていないものも販売されています。

 

メンタルサプリ「アミノ酸編」

 
 

 ギャバ

 
メンタルサプリの中でも有名なギャバは、うつ病とも関連の深いアミノ酸であり神経伝達物質でもあります。ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンといった興奮性の神経伝達物質を抑制する働きがあるため、不安や緊張の軽減、ストレスの軽減、睡眠の改善に効果があるされています。不安の強いタイプのうつ病に適していると考えられます。
 
慢性的なストレス、抗不安薬の連用、アルコールの大量摂取などにより、ギャバは枯渇しやすいため、常に補給する必要がありますが、ストレスがかかってから摂取するより、あらかじめ摂取しておき、ストレス反応を起きにくくする方が効果的であると言われています。
 
ギャバはおよそ2時間程度で効果がなくなるため、頻繁に摂取する必要があります。最近ではパウダータイプのサプリメントも販売されているため、ドリンクやお茶などに混ぜることで、手軽に摂取できるようになっています。
 
分子整合医学を実践するアメリカのエリック・ブレーバーマン博士は1回100~500mgのギャバを10時、15時、必要であれば就寝前に摂取することを勧めています。また、米国では血液脳関門を通過できるギャバ類縁化合物のピカミロンと呼ばれる栄養補助食品も販売されています。基本的には過剰に摂取しても尿中に排泄されるか、コハク酸を経てクエン酸回路を経て分解されるため、重篤な副作用は報告されていません。
 
 

 ギャバは血液脳関門を突破しません

 
ギャバに放射性物質をつけ血液中にいれた後、脳内の神経細胞に取り込まれるか調べる実験では、血液脳関門をまったく通りませんでした。しかしギャバは直接、脳に届くのではなく、腸管から脳中枢に行く迷走神経系を刺激することで、リラックス効果を及ぼしているという報告があります(浜松医大の高田明和名誉教授)。
 
私たちは脳から体への信号の他、体から脳への信号も送られており、脳と体は常に影響を及ぼしています。アメリカでは、胃腸から脳に向かう迷走神経を刺激する、うつ病の治療法もあるほどです。ギャバは血液脳関門は突破しませんが、体の中枢である胃腸などから脳に発信される、負の信号を抑える事で、脳に抗不安効果等を及ぼしていると考えられています。
 
 

 食品100gあたりの含有量(mg)

 
トマト62.6、みかん28.9、ぶどう23.2、ナス20、ゆず12.4、発芽玄米10、かぼちゃ9.7、かぶ8.2、きゃべつ8.2、きゅうり7.2、えだまめ6.4
 
 

 ギャバ摂取の際の注意点

 
大量摂取で吐き気が起こる場合があります。また、抑制系の伝達物質であるため、脳が過剰に興奮していないにもかかわらず摂取を続けると、過鎮静の状態となり、意欲低下や疲労の出現を招く恐れがあります。

 

 タウリン

 
栄養ドリンクなどに良く配合されているタウリンというアミノ酸も、抑制系の伝達物質です。タウリンは、神経細胞膜の電荷の逆転を防ぎ、電気的に安定させる働きがあるので、興奮の発生を抑える効果があるとされています。
 
不安や緊張、不眠以外にも、偏頭痛に関しても利用される場合があり、不足すると不安等以外にも、多動やてんかん発作などが発生しやすくなると言われています。これらの作用の他にもコレステロール値や、血圧を下げる効果も知られています。
 
 

 グリシン

 
グリシンも抑制系の伝達物質であり、睡眠中に脳や筋肉の活動を抑え、眠りを深いものにすると言われています。深い眠りはノンレム睡眠と言われますが、ノンレム睡眠の中でも特に深い、徐波睡眠に移行するまでにかかる時間を、グリシンは短縮する効果があるため、より質の良い睡眠が取れると考えられています。最近では、快眠効果があるサプリが良く売られていますが、それらのサプリメントにも良く配合されています。

 

 テアニン

 
うつ病とお茶
緑茶に含まれるアミノ酸の半分を占めているテアニンは、血液脳関門を通過することができ、直接脳に入り神経細胞膜の電荷の逆転を防ぎ、脳の興奮を抑えます。これにより、抗不安、抗緊張、抗ストレス、睡眠の改善、集中力の向上等の効果が得られます。高級なお茶ほど、テアニンが含まれる量も多くなっています。うつ病にも効果的と言えます。
 
実際にテアニンを摂取すると、約30分ほどで効果が現れ、リラックスしている時の脳波であるα波を確認することができます。テアニンによるリラックス効果は、約5時間後にピークを向かえ、その後降下していきます。ギャバよりも長時間効果が期待できます。テアニンはサプリメントの他、ドリンクやアメなどの商品に配合されていることも多く、その安全性は高いと考えられています。

 トリプトファン

 
必須アミノ酸であるトリプトファンは、うつ病と関連の深いセロトニンの原料となっているもので、肉類、バナナ、豆腐、アーモンドなどに多く含まれています。トリプトファンは、アミノ酸の中でも、最も血液脳関門を突破しにくい物質ですが、空腹時に果物ジュースと一緒に取ることで、インスリンが放出され、このインスリンが血液脳関門を突破しやすくしてくれます。
 
SSRIなどの抗うつ薬は、セロトニンの再取り込みを防止することで、数少ないセロトニンを有効活用しているような状態ですが、トリプトファンの摂取はセロトニンの数を、もとから増やすことで抗うつ効果を発揮し、いくつもの文献で抗うつ薬と同程度の抗うつ効果があるという報告されています。
 
 

 トリプトファン摂取の際の注意点

 
薬に比べ副作用は少ないですが、大量に摂取すると、翌日の眠気、奇妙な夢、血圧上昇などがみられたりすることがあります。また、すでに抗うつ薬を服用していたり、肝機能障害のある人、妊婦などは服用をするべきでないか、または服用には細心の注意が必要とされています。
 
 

 好酸球増加筋痛症(EMS)とは

 
1989年10月、昭和電工から販売されていたトリプトファンのサプリメントを摂取した人の中に、白血球の内の1つである好酸球が著しく上昇し、発熱や筋肉の痛みなどが現れる好酸球増加筋痛症(EMS)を起す人が現れ、38人の死者を出す事態が起こりました。
 
しかしこれはトリプトファンそのものが原因ではなく、トリプトファンを安価に製造するため、遺伝子組み換え微生物を利用した際、製造過程でできた、エチレンビストリプトファンやフェニルアミノアラニンなどの不純物を取り除かなかったことが原因とされています。
 
この不純物に反応するのは250人に1人であることも、EMSの発症に個人差が大きいことがわかります。トリプトファンは必須アミノ酸であり、牛乳など私たちが通常食べるものの中に普通に存在するものであり、トリプトファンそのものが危険なものでないことは言うまでもありません。トリプトファンに限らずサプリメントの質に問題があります。

 

 フェニルアラニン

 
必須アミノ酸であるフェニルアラニンは、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンになる前の物質であり、血液脳関門をもっとも通過しやすいアミノ酸と言われています。
 
うつ病はよく、セロトニンが足りないことで起こると言われますが、実はセロトニンではなく、ドーパミンまたはノルアドレナリンが足りないことで起こるうつ病、というものもあります。セロトニンは安心感を、ノルアドレナリンは意欲の向上を司る、と考えられているため、一般的にセロトニン不足のうつ病は、抑うつ感が強く、ノルアドレナリンなどの不足によるうつ病は、抑うつ感よりも意欲低下が激しいといった傾向があります。
 
自分のうつ病はまさに、ノルアドレナリン不足のうつ病で、抑うつ感よりも意欲低下が激しいうつ病でした。そのため、ノリトレンというノルアドレナリン優位の抗うつ薬が良く効きました。
 
抗うつ薬は、擬似的に伝達物質を増やしている面が大きいですが、アミノ酸の摂取は、伝達物質になる素ですので、もとから量を増やす効果が期待できると考えられます。
 
 

 フェニルアラニン摂取の際の注意点

 
フェニルアラニンは、慢性のストレス、ニコチンやカフェインの摂取、違法薬物の乱用などで枯渇しやすく、不足すると、起床が辛かったり、集中力や意欲の低下が見られますが、取りすぎると逆に、不安、不眠、焦燥感、高血圧などが現れる場合があるため注意が必要です。また、就寝前の摂取は眠れなくなる恐れがあるため通常は避けます。
 
その他、高血圧の人、抗うつ薬を服用している人、肝機能障害のある人、妊婦、フェニルケトン尿症の人、躁病や統合失調症の人に関しては基本的に服用しないか、服用には細心の注意が必要です。

 5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)

 
 

 トリプトファンよりセロトニンに近い物質 

 
バナナやトマトなどにもごく少量含まれている物質で、特にアフリカのグリフォニアシンプリフォリアという植物の種に、多く含まれている天然の物質です。5-HTPは、セロトニンの前駆物質であるため、抗うつ効果、うつ病の再発防止効果、気分の向上、感情の安定、リラックス効果などの効果があります。セロトニンはのちに睡眠の伝達物質であるメラトニンに変化するため、睡眠の改善にも効果があります。海外ではサプリメントとして販売されています。
 
 

 5-HTPとトリプトファンの違い

 
5-HTPは、トリプトファンよりさらにセロトニンに近い物質であり、他のアミノ酸と競合することなく、血液脳関門をスムーズに通過できます。一方トリプトファンは他のアミノ酸の中でも、最も血液脳関門を通過しにくい物質で、さらに摂取したすべてがセロトニンになるわけではなく、その一部はキヌレニンへの変化へ使われてしまいます。このようなことから5-HTPは、トリプトファンに比べセロトニンを増やす効果が10倍高いと言われ、摂取量も10分の1で良いとされています。
 
45人のうつ病の患者を、Lトリプトファングループ(1日5000mg)、5-HTPグループ(1日200mg)、偽薬グループに分け、1ヵ月後にハミルトンうつ病評価尺度でうつ病のレベルを調べた実験では、トリプトファンも、うつ病に関して効果があるものの、5-HTPの方が、より効果的であったと報告されています。(アルバートアインシュタイン大学のバン・プラグ教授)。
 
以下の表はその時の実験で、ハミルトンうつ病評価尺度の点数を表したものです。1ヵ月後には5-HTPの方がより数値が低くなっており(低いほど改善)、うつ病の改善程度がわかります。

  5-HTP L-トリプトファン 偽薬
開始時 ( 初日 ) 26 25 23
終了時 ( 30日後 ) 15 19

 出典: H.M.van Praag, Studies on the mechanism of action with serotonin precursors in depression, Psychopharmacology Bulletin 20 599-602(1984).

 
 

 5-HTPと抗うつ薬の違い

 
うつ病の治療に使われる抗うつ薬は、再取り込み受容体にフタをすることで、今ある数少ないセロトニンを有効活用して、その効果を発揮しますが、5-HTPはセロトニンの原料となる物質を補給することで、セロトニンを素から増やすように働きかけます。

通常セロトニンは再取り込みされた後、睡眠を司るメラトニンになったり、感情にとって重要な物質である、5-HIAA(5-ヒドロキシインドール酢酸)になったりしていますが、抗うつ薬により再取り込み口をふさいでしまえば、漂うセロトニンは増えますが、メラトニンや5-HIAAを作る道を断ってしまうため、それらはあまり作られなくなります。
 
よくSSRIを飲むと睡眠が浅くなったり、不眠が現れると言われますが、再取り込み口からセロトニンが取り込まれないので、メラトニンなどを合成できずに、眠れなくなったと考えられます。また、5-HIAAについては、自殺、暴力、極度の不眠、薬物依存などの、かなり破壊的な気分におちいるのを防ぐ働きがあるとも言われています。
 
薬との効果のほどについてはたくさんの報告がありますが、その多くが抗うつ薬と同等の効果があるとしています。なおかつ、効果が現れる期間が抗うつ薬に比べて早く、副作用は少ないという報告が多いです。
 
34人のうつ病患者(ハミルトンうつ病評価尺度25点~27点)を、5-HTPグループ(100mg×3回/1日)と、SSRI系の抗うつ薬である、ルボックスのグループ(50mg×3回/1日)に分け、6週間経過を観察したところ、2週間たった時点で、5-HTPの方がより高い改善率を表し、6週間後にはどちらも約10点になるほどの改善を見せたとの報告があります(スイスのウオルター・ポルディンガー教授)。
 
 

 5-HTPの副作用について

 
5-HTPの摂取で最も多い副作用は吐き気で、その発生率は9%程度ですが、2週間前後で自然に治まると言われています。吐き気の副作用を抑えるのに有効なのは、アメリカのマイケル・マリー博士によると、1回50mg程度の5-HTPを1日3回からはじめ、必要であれば1回100mgを1日3回とすると良いと報告しています。それでも吐き気がある場合は、食事の後に飲んだり、または、しょうが湯やしょうがのサプリメントと一緒に飲むと良いと言われます。しょうがには吐き気防止の効果があります。
 
その他の副作用は、不安やイライラの出現がありますので、それらが現れた場合には中止したほうが良いです。また、すでに抗うつ薬を服用していたり、肝機能障害のある人、妊婦などは服用をするべきでないか、または服用には細心の注意が必要とされています。
 
 

 5-HTPのうつ病再発防止効果

 
うつ病は一度かかると完全に治った後でも、その50%は再発すると言われています。さらに2度かかった人が、3度なる確率は70%とも言われるほど、再発率の高い病気ですが、5-HTPには、うつ病の治療効果以外にも、再発を防止する効果も知られています。
 
長期間うつ病の再発を繰り返している20人に対し、はじめの1年間は5-HTP(1日200mg)を、次の1年間は偽薬を摂取させたところ、5-HTPを摂取している間の再発7回であったのに対し、偽薬を摂取している時の再発は24回に及んだという報告があります(バン・プラグ教授)。さらにうつ病のタイプ別では、低セロトニンタイプのうつ病であった13人に関しては、5-HTPを摂取していた時の再発は1人しかいませんでした。
 
 

 5-HTPは抗うつ薬よりもすぐれているのか

 
抗うつ薬とは作用の仕方が違うという点はすでに述べましたが、5-HTPは抗うつ薬よりも有効なのでしょうか。そもそも5-HTPはセロトニンをつくる物質であるため、抑うつが強いタイプのうつ病に代表される、セロトニン不足によるうつ病であった場合には、効果が期待できますが、意欲低下の激しいうつなどに代表される、ノルアドレナリン不足のうつ病の場合にはあまり効果は期待できないと考えられます。栄養療法ではその場合はノルアドレナリンの原料であるフェニルアラニンやチロシン等の摂取が良いと言われています。
 
セロトニン不足のうつ病であるが、5-HTPがその人に合わなかった場合には、栄養療法ではトリプトファンに切り替える程度しか策がありませんが、抗うつ薬にはセロトニンはもちろん、セロトニン以外にも働きかける、さまざまな種類の薬があります。また、抗うつ薬の中には神経新生を手助けするものもあると言われています。
 
これらの点から考えると、どちらが効果的かという事より、その人に合った方法であるかという視点の方が大切であると感じます。仮に今、すでに薬の処方を受けている方が、5-HTPのサプリメントを服用してみたいという場合には、必ずその旨を主治医に相談する必要があります。5-HTPサプリメントを単体で決められた量を守って服用すれば安全なものですが、薬と一緒に服用すると、セロトニン症候群などの危険な副作用が出る場合があります。すでに服薬中の方は必ず守ってください。

うつに効くサプリの品質

 
 

 うつに効くサプリの安全性

 
うつに効くサプリなどの健康食品は、医薬品ではなく、薬事法の規制を受けないばかりか、食品衛生法の規制も受けません。厚生労働省はサプリメントの品質について調べる役割は担っていないのです。そのため、必要な栄養素が謳っている通りに含まれていなかったり、逆に成分表に含まれていない成分が入っていたり、その品質は千差万別で、日本のコンビニやドラックストアで手軽に手に入るサプリは、どれもあまり品質の良いものはなく、サプリメントにおいて日本は遅れているといわざるを得ません。
 
 

 ◎ アメリカのサプリメント

 
アメリカでは日本より数倍厳しい基準で、食品衛生局(FDA)が薬やサプリメントの管理監督を行っており、アメリカのサプリメントは一般的に品質の良いものが多い傾向にあります。
 
また、アメリカにはGMPという製造環境に設けられる規範(選定基準は10項目にあがり合格するのが困難であり、なおかつ合格後も抜き打ち調査がある)や、サプリの品質そのものに関してはUSP規格(アメリカ薬局方)という基準も存在し、日本に比べサプリに対する品質をチェックする基準が整備されているため、それらを満たしているかということも、サプリメントを選ぶ際の1つの指針になります。
 
 

 サプリメントの効果

 

 ◎ 天然のものと合成のもの

 
サプリメントには天然ものと合成ものがありますが、一般的には天然のもので、なおかつ無精製のものが良いと言われています。それは目的とする有機物以外にもさまざまな成分が入っており、それらをまとめて取ったほうがより効果が大きいとされている事に由来します。
 
合成ものは場合によっては胃腸の調子を崩したり、化学物質に弱い体質の場合はアレルギーを起す場合がありますが、天然のものはそれらの危険性が少ないと言われています。
 
しかし、天然ものも、酸化しやすい、値段が高い、成分が少ない、花粉などの不純物が混じっていると花粉症が悪化する等のデメリットもあり、一概に絶対に天然ものでないといけないというわけではありません。医薬品として病院で処方されるビタミン類なども、ほとんどが合成ものですし、特にビタミンBなどは合成ものでも高い効果が期待できると言われています。
 
 

 ◎ サプリメントの選び

水溶性のビタミンはたくさん摂取してもすぐに尿としてすべて排泄されてしまうので、長時間をかけて徐々に吸収されるような加工(タイムリリース)をされたサプリメントを選ぶ事が推奨されます。また、ミネラルに関しては体に吸収しやすいような加工(キレーション)をされたサプリメントを選ぶほうが効果的です。
 
サプリメントの摂取時間は空腹時では排泄までの時間が半分に短縮されてしまうため、食後に取ることが一般的です。また、開封前は3年程度持ちますが、開封後は劣化を防ぐため6ヶ月ぐらいまでに使い切るのが良いと言われています。

これらの物質はいずれも薬との相互作用があったり、別の病気には悪影響を及ぼす可能性があるため、重い内科疾患がある人や、すでに抗うつ薬等を服用している人は、必ず主治医に相談する必要があります。
ここで示している物質の摂取量に関しては、各種文献等によるものであり、効果や安全性を保証するものではありません。サプリメントなどで摂取する際は必ずメーカー指定の摂取量を守るか、通院中の方は医師に相談して下さい。