受診に関するうつ病相談
 

受診に関するうつ病相談 

精神科は他の診療科と違い、一般的になんとなく怖いなどのイメージを持たれることが多く、受診するのに抵抗を感じる方も多くいます。ここでは、 うつ病の相談の中でも、 受診に関する相談について、精神保健福祉士がお答えしています。
 

自分から受診するという行動や、さまざまな対処法を自ら知ろうとする行為には、それ自体に治療的効果があると感じます。

一昔前では、精神疾患に対しての治療は確立されていませんでした。そのため治療といっても、患者さんを滝にうたせたり、お湯や水につからせたりといった方法しかなく、結局閉鎖的な空間に閉じ込めておくという措置がとられていた事実があります。そのため、「精神病院に入院したら一生出られない」、「頭がおかしくなってしまう」などの間違った認識をもっている方が多数います。
 
しかし、精神疾患に対する治療薬が開発された近年では、そのようなことはありません。まだ精神疾患のすべてが解明されたわけではありませんが、病気のメカニズムも徐々にわかってきています。
 
一昔前の悪い慣習をくりかえさない為にも、精神科では特に人権に対しての認識が強いです。病棟には必ず電話があり、外とのつながりが取れるようになっていたり、第三者機関に退院を請求する事もできるようになっています。
 
精神科病院の中には、医師や看護師をはじめ、さまざまな職種の者がいますが、その中でも特に患者さんの人権を擁護する立場にいる職種が、精神保健福祉士(PSW)です。精神保健福祉士は、医療における人権擁護という視点を一番持っている職種になります(意識の低い者もいますが)。もし、受診されたことにより人権を侵害されるようなことがあれば、まず病院のPSWに相談して見て下さい。病院に雇われている職員という立場ではなく、あくまで1人の精神保健福祉士であるという意識のあるPSWなら、しっかりとした対応をしてくれるはずです。ダメな場合は、第三者機関に相談して下さい。
 
受診のためでなくても病院に入ることはできますので、一度見学に行くのも良いかと思います。自分の目で、その病院の雰囲気を確かめてみてください。小さなクリニックにはいない場合がありますが、大きなクリニックや病院にはPSWが医療福祉相談室、医療相談室などの部署におります。
 

うつ病かもしれないと思った時、まずはじめに思い浮かぶのが精神科だと思います。他に心療内科なども思い浮かぶかもしれません。最近では、メンタル科などの名称もありますね。大切なのは科の名称ではなく、その医師が精神疾患を専門にしているかどうかだと感じます。たまに内科医なのに、患者を呼ぶためだけに心療内科等も標榜している病院もあり、注意が必要です。もちろん有能な心療内科医もいますので誤解のないように。
 
よく精神科等は行きにくいので、いつもの内科を受診する方がいますが、場合によってはうつ病をこじらせることがあります。以下にその一例をあげてみます。
 
眠剤とあわせて、本来は抗うつ剤の処方が必要な場合でも、眠剤のみしか処方しない。
抗うつ剤を処方しても、副作用をおそれて必要な量まで処方できない。
SSRI(抗うつ薬の一種)の精神的な副作用を、うつ病の症状と誤認。
使える抗うつ薬の種類が少ない…。
 
でもそれはあたりまえだと思います。内科医ですから。精神科医が他の診療科に関しての知識が少ないのと同じです。
 
また、吐き気がある、頭痛がする、お腹が痛いなど体に症状が現れる場合も多いため、そういう意味で、まず内科を受診してみる、検査をしてみるといった使い方であれば、受診する意味があるかと思います。有能な内科医であれば、自分の精神科治療の限界を知っていて、こじれる前に適切な所に、紹介状を書いてくれると思います。
 
昔の抗うつ剤に比べ、最近の抗うつ剤は副作用が少なく、内科医でも処方しやすいため、かなりの数のうつ病患者さんが、内科で診察されているように感じます。その中には簡単に治るはずのうつ病が、適切に診察、処方されないために慢性化し、さらに治りずらくなってしまった方もいます。うつ病に限らす、病気はやはりその病気にあった、専門医の診療をお勧めします。
 

おおまかに述べると、病院はベット数(入院できる数)が20床以上のものをいい、クリニック(診療所、医院、含む)はベット数が19床以下のものをいいます。料金も病院の方が高いです。
 
初めから入院を希望しているような場合は、病院を受診するのが良いのかもしれませんが、クリニックでも入院が必要になった場合には、病院を紹介してもらえるかと思います。なによりも自宅から、あるいは職場から通いやすい所が良いかと感じます。精神科では症状が改善されても、再発防止のため長期にわたり服薬が必要になることが多いからです。
 
大学病院だから良い医師がいるとは限りませんし、良い病院と言われている中にも、さまざまな医師がいます。病院とかクリニックとか精神保健指定医であるとかいうのはあまり意味がないように感じます。
 
要はあなたを診察している目の前の医師について、あなたが良い医師か悪い医師か判断して下さい。
 

初診時の診察で大体3000円ぐらい(3割負担の健康保険使用の場合)です。診察した医師や受診した本人の年齢なども、料金に反映されてきます。薬によっても値段がさまざまなので一概には言えません。
 
心理士による心理カウンセリングを受ける場合には、保険適用外のため1回1万円以上かかることもあります。いわゆるカウンセリングに関しては、行っていない医療機関の方が大多数です。
 
また、精神科では受診が長期にわたることが多いため、通院費を軽減する制度(自立支援医療)があります。通院先の受付の方や相談員の他、お住まいの市役所等に相談してみてください。

 

精神科の病棟には、閉鎖病棟という鍵のかかる病棟と、開放病棟という鍵のかからない病棟があります。また、鍵のかかる保護室、と呼ばれる個室に入院する場合もあります。病気の症状により、他人を傷つけたり、自分を傷つける恐れのある場合、多量の飲水により生命の危険がある場合など、必要に応じて鍵のかかる環境での治療が必要になることもあります。
 
自殺したい気持ちが高く、実際に行動に起こしてしまいそうな時や、妄想などにより、他人を傷つける恐れがある時などは、症状が改善されるまでの間、保護室に入ることもあります。
 
上記のような治療の必要性がない場合には、開放処遇となり、一般の入院と変わりません。開放病棟で、本人が希望して入院するという形態が基本です。家族の同意等によって、本人の意思に反して入院させることも精神科では可能ですが、その場合は、精神保健福祉法という法律に基づいて行われます。
 
入院に関しては、抵抗がある方も多いと思いますが、入院することで、より細やかな診察が可能になり、適切な処方が出来る、ストレスから解消され療養に専念できる、など結果として回復が早くなることも期待できます。精神症状の悪化により、食事も取れない場合などは、生命の危険も出てきてしまいますので、このような場合も入院が必要となるでしょう。入院に関しては主治医と良く相談して下さい。なお、入院する際は、高額療養費の申請をおすすめします。

 

気分の落ち込みや不眠などは病気でなくても、誰にでも経験があります。そのため、「うつ病ではなく、ちょっと疲れているだけ…」と無理をしすぎた結果、かなり症状が悪化してから受診に訪れる方も多いです。早期の治療は精神科でも重要です。出来るだけ早く医療機関に訪れる事が大切です。
 
しかし、前述したように「気のせいでは」「自分が我慢すればすむ」「頑張れば治る」等、なかなか受診に結びつかない場合も多いと感じます。特に年配の方は、気の持ちようでどうにかなる、病気ではないと考えている方も多いようです。
 
気になる症状があれば、病気かどうかわからなくても、軽い気持ちで受診してみるのをお勧め致します。目安として、ある症状により「生活に支障が出ている」ような場合には、ためらわず受診したほうが良いでしょう。
 
もしも病気と医師が判断し、しっかりとした治療が行われたのならば、あなたが感じている、そのつらい症状が改善されていく可能性は十分にあります。長年、症状がありながらもなんとか生活しておられる方にお会いすると、もう少し早く受診されていたら、その方の人生も変わっていたのかなと感じることが良くあります。早すぎて困るものではありませんので、受診してみて下さい。病気でなければ、治療の必要性はありませんが、それを判断するのは、本来はあなたではなく医師の仕事です。
 

倦怠感や、眠気、あるいは焦燥感などといったものなど、特にうつ病の症状なのか、あるいは薬の副作用なのか紛らわしい場合がよくあります。ひとつポイントとなるのは、その症状がいつからあるものなのかといったことでしょう。薬を飲み始めてからや、処方の変更をしてからの場合は、副作用の可能性もあるかと思います。特に処方の変更時には、いつも以上に注意深く自身の状態を把握することが重要となります。まわりの方も同様です。副作用の場合、しばらく様子をみていると次第に軽くなっていく傾向があります。
 
しかし、急な高熱、筋肉の硬直、意識障害、といったものが現れた時は夜間でもすぐに医療機関へ相談して下さい。ごくまれですが、中にはこのような重篤な副作用もあります。
 
副作用でも症状でも、その他なんでも気になる点は主治医に相談することが一番重要かと思います。

 

なるべく薬を飲みたくないので、カウンセリングだけで治したいとの相談がよくあります。カウンセリングという言葉が一人歩きしているような印象も受けますので、少し整理してみたいと思います。 
 
基本的にカウンセリングを行うのに、資格は要りません。そのため、現状ではやりたい人が自由にカウンセラーと称してお金を取って行っています。中には少々あやしげな方も、カウンセラーとして仕事をしているようです。さもすぐに仕事ができるようなうたい文句で、カウンセラーを育成する学校すらあります。
 
有能なカウンセラーももちろんいます。臨床心理士はある一定の質の証明にはなると思います(経験が重要ですが)。
 
精神科医は、臨床心理士が行うような心理カウンセリングはできません。「診察」あるいは「精神療法」という形になります。医師免許が必要です。薬の処方もします。
 
副作用がこわいから薬を飲みたくない、カウンセリングだけでうつ病を治したいという方もいますが、カウンセリングにも副作用はあります。場合によっては受ける前より混乱して症状が悪化し、治療が長引いてしまうこともあります。いわゆる心理カウンセリングには、保険がききませんので、1回5000円~20000円ぐらいかかることもあります。また、あまりに症状が現れている場合には、カウンセリングを受ける気力もないかもしれません。
 
カウンセリングについてマイナス面ばかり述べましたが、もちろん有効な場合もあります。病気にとって回復を助ける働きをすることもありますし、物事に対する自分の捉え方のくせを変え、再発を防ぐ役割をする場合もあります。より良い生き方を発見出来るかもしれません。
 
うつ病であれば、基本はまず医療機関で、医師の診察を受けてみることをお勧めします。カウンセリングの希望があれば、主治医に相談してみると良いと思います。中には、心理士のいる病院もあり、診察と併用してカウンセリングを受けられる医療機関もあります。
 

なぜそのように感じているのか、その理由を明確にしてみる必要があるかと思います。話を聴いてくれない、威圧的だ、信頼できない、ぜんぜん良くならない、病院が遠い…などさまざまだと思います。主治医を変更することで、それらの問題が良くなるのであれば、それもひとつの方法と言えます。 
 
ただ、精神科の治療には時として長い年月がかかることがあります。はじめはあまり好きではなかったが、今思うとなくてはならない先生と思えることもあるかもしれません。また、ころころと主治医を変更する人がいますが、治療に一貫性がなくなってしまい、結果的に病気の回復を遅らせることに繋がります。
 
薬は人により効果に個人差がある為、医師は経過を注意深く見守っています。見守っている最中に通院先を変更してしまうと、またはじめからやらなくてはならなくなるため、もし変更する場合は、紹介状をもらっておく事が必要です。紹介状が無い場合は、今まで服用した薬の処方がわかるものを持参すると良いと思います。
 
ある程度の期間(半年など)通院してみて、まったく症状が改善しないと感じる時は変更するのも良いと個人的には思います。しかし診察場面などで、医師とけんかしてしまい、一時の感情で変更するのはどうかと思います。診察は患者さんと医師との共同作業だと思いますので、歩み寄る姿勢も必要かと感じます。けんかしてしまうこと自体が、病気の症状として起こっている場合も時にあるからです。いろいろな状態の時のあなたをみている医師の方が、より総合的にあなたを理解していると感じます。ひとついえるのは、大学病院だから良い医師、町のクリニックだからあまり良くないということはまったく関係ありません。同じ病院内でもいろんな医師がいます。
 
また、あんまり話は聞いてくれない医師なのに病気は良くなったり、すごく話をきいてくれる医師なのに病気が悪くなることもあります。要はあなたが選べば良いと思います。

 

断眠療法、光療法、運動療法、認知療法、音楽療法、電気痙攣療法などの治療法がありますが、一般的には薬物療法が中心です。
自分は回復したのちに再発防止として光療法を行いました。夜勤などでリズムが崩れがちでもあるので、リズムを整えるためにも効果的でした。療法といってもそんなに大げさなものではなく、朝食を食べる間、光をあびるだけです。自分の家は日当たりが悪いので専用のライトを使いましたが、朝日の差し込む部屋であれば、窓の近くで光をあびれば十分です。曇りの日でも明るさは十分です。朝の散歩も手軽な光療法です。
 
また、上記とは別に、この本を読めば、うつが治る、このマニュアルを読めばうつ病が治るなどと謳っている、あやしい商品もあります。うつ病は祖先の供養をしていないからなると言う、怪しい団体もあります。手を出さないで下さい。うつ病は脳の病気です。スタンダードなうつ病であれば、薬物療法と休養でうつ病は治ります。

 

うつ病の薬も風邪薬もかわりません。主作用があり副作用があります。うつ病の薬は性格が変わってしまうのではないか、やめられなくなるのではないか等、心配される方がいますが、医師の指示通り服用していれば、依存もないと考えます。抗不安薬がたくさん出ていたり、常用されている場合などは、医師にそのことを聞いてみてください。
 
また、妊娠されている際は、胎児に影響が出る場合がありますので、医師に話してください。自分は男性なので、妊娠することはありませんが、妊娠させる可能性があるため、精子に影響があるのか、薬剤師に相談したところ、製薬会社に連絡をとってくれて、自分の服用している薬にはその心配はないと教えてくれたため、安心して服用することができました。
 
不安に感じることが少しでもある場合は、医師や薬剤師に聞いてみることが大切です。不安な気持ちで服用しても効果は半減です。よく効く良い薬という気持ちで服用すると、効果に違いがあるとも言われます。
 

自分でうまく経過を伝えられないと感じる時や、不安が強い時は、経過や症状を良く知る人に同席してもらうと良いと思います。自分で伝える場合には、メモなどに書いておくと良いかもしれません。
 
すでに服用している薬がある場合には、処方のわかるもの(お薬手帳、薬の説明書)を持参すると良いでしょう。
 
また、初診の場合は30分以上かかることもありますから、時間に余裕をもって、あらかじめ電話で問い合わせを行ってみてください。予約制をとっている医療機関も多いです。
 
いろいろ書きましたがあまり難しく考えずに、ひとまず受診してみて下さい。必要なことは、医師のほうから聞いてきてくれます。早期治療がその後の経過に左右します。
 

抗うつ薬は服用を始めてから効いてくるまでに、2~4週間程度かかります。その理由について、いろいろな仮説がありますが、正確なところはわかっていません。しかし、この時期に効かないからと服用をやめないで下さい。
 
また、抗うつ薬は十分な量を、十分な期間服用することが必要です。それでも効果がない場合には、違う作用のする抗うつ薬に変え、十分な効果が出る薬を探してきます。
 
うつから回復し予防的に服用する期間についても、特に服用している実感がない場合が多いですが、一定期間は服用を続けます。

 

多くの場合、市販薬を服用しても特に問題はありませんが、まれに効果が落ちたり、副作用がでたりすることがあるため、必ず事前に医師に確認をとっておくことが必要です。中には重大な副作用が出る恐れもあります。
 

うつ病は再発しやすい病気です。一度うつ病になった人が治った後に再発する確率は約50%と言われます。さらにこの確立は、再発をくりかえすたびに高くなっていきます。そのため、初発のうつ病は初発のうちにしっかり治すのが大切になります。抗うつ薬には再発を防止する効果もあるとされていますので、回復した後にもある一定期間は服用を続けます。初発の場合はのちに徐々に減薬し、服薬を中止する場合が多いです。
 
再発を繰り返している場合や、発症すると重症化する場合などは医師と相談し、継続的に服薬を続ける場合もあります。精神科の病気以外にも、糖尿病などでも服薬は長期間継続しますし、特別なことではありません。
 
服薬をどれくらい続けるかといったことは、副作用がどの程度あるのかといったことも影響するかもしれません。いずれにしても主治医と十分に相談して決めてください。
 

まずは受診に行きたがらない理由に耳を傾けてください。その上で市役所、保健所、病院等に相談して下さい。民間救急という方法もあります。数は少ないですが、病院によっては往診をしている医療機関もあります。
 
また、すでに通院しており、一時的に症状が重く通院できないといった場合は、まずは通院先の医療機関に相談してください。
 

うつ病の薬物療法において、一番重要な薬は、抗うつ剤です。製薬会社からは、さまざまな種類の抗うつ剤が出ています。ごく一般的な見解ですが、昔の薬は、効果も強いが副作用も強い傾向にあり、新しい薬は、副作用が顕著に改善されています。
 
そのため、抗うつ剤の処方が必要な場合には、まずSSRIなどの新しい抗うつ剤から処方をはじめることが一般的です。うつ病の程度が軽い場合には、抗うつ剤を処方しないこともあり、その場合には、生活習慣や環境の改善、認知行動療法や運動療法、その他、軽い抗不安薬等で経過を見ることもあります。
 
はじめに処方したSSRI等が効かない場合には、三環系抗うつ剤と言われる、古いタイプの薬に変えることもあります。
 
最近の抗うつ薬の有効性を比べた、MANGA studyという報告では、リフレックス(NaSSA)が一番高く、ついでレクサプロ(SSRI)となっていますが、あなたにも同じように有効性が高いかと言うと、それはまた別問題です。一番大切なのは、その人に合った薬かどうかと言うことになります。